第20話 護衛依頼3
日の出前にハンヴィーに乗って南門に行くと誰も居なかった。
しばらくすると浩史達もやって来たので荷馬車を待つ。
荷馬車が4台こちらにやって来る。
先頭はカーティスだが4台?
ハンヴィーの近くで停まりカーティスが降りて来る。
カーティス、ダレン、ジーナ、他4名?誰だ?
「すみません、荷馬車が1台増えました。王都の取引先に頼まれまして断れずに引き受けました。皆さんには、これまで通りに護衛はバイロン商店の荷馬車3台をお願いします」
ダレンが4人を紹介する。
「カルロ、フリオ、マカード、フィオナさんです」
レベル24のマカードが人で杖を持っている、他は人虎族カルロがレベル27、フリオがレベル26でフィオナだけ女でレベル26だ。全員冒険者?商人は居ない。
「契約を途中で勝手に変更するのは普通なのか?」とカーティスに聞いてみる。
「少しはあります」
「普通じゃないんだな?」
ダレンが「1人に付き大銀貨2枚を報酬に上乗せします」
「金は要らないから付いて来るな、それか俺達が降りるか好きな方を選べ」
「ここで降りたら報酬は出せませんが宜しいですか?」
「条件を変えたのはそっちだろ?」
「ではギルドの達成数ではいかがですか」とダレンが聞いて来る。
「ダレンに決定権があるのか?カーティスどうなんだ?」
ダレンがカーティスを説得している。カーティスも納得したのか話は終わった。
「では達成数3でお願いできませんか?」
「10だな」
ダレンが再び話に入って来る「達成数5でお願いします。私が責任を持ってバイロンさんに承諾して貰います」
「お前とは話してない、引っ込め」
「では達成数5でいかがですか?」
「それでいい」出発を遅らすのも面倒なので達成数5で手を打った。
俺達も一応自己紹介をして出発する。
先頭は俺達で、最後尾に冒険者4人の荷馬車。
休憩の時にフィオナが浩史に話し掛けていた。
「これはどうやって動いているの?」
「教えたら頭撫でていい?」
「えっ?体を撫でさせろって事?」
「違う。頭を撫でたい」
「頭を?別に構わないけど…」
「電気でモーターを回転させて動力にしている」と言いながら頭を満足そうに撫でている。
「電気ってなんなの?」
「雷は見たことある?」撫でている。
「雷ぐらい知ってるよ」
「雷が落ちた時に光でしょ、あれが電気」撫でている。
よくロンも撫でられている。ダンジョンで熊が出た時も傷のない所を撫でていた。
「いつまで触っているの?」
手を引っ込めて「人虎族は凄いね」変な感心をしていた。
「魔力じゃなくて雷なんて聞いた事ないわよ」
「俺も兄貴も魔法は使えないから、俺達の国では普通だよ」
「これはあたしにも動かせるの?」
「無理だね。動かせるのは俺と兄貴だけ」
「一度試させて?」
「そこまでにしてくれ。出発する。浩史行くぞ」
その後も休憩の度にフィオナが浩史にハンヴィーの事を聞いて来た。
次の日には浩史がフィオナに対して距離を取るようになった。
「人虎族の子供も子供チームに入れない?」
フィオナは苦手だけど虎は触りたいみたい。
「拾って来るなよ」
「さすがに誘拐はしないよ」
「頼むよ。ホームを孤児院にはしないよ」
トラブルや魔物に襲われる事もなく、昼過ぎにニームの街に到着した。
浩史がハンヴィーを戻しに行っている間にイネスの宿で部屋を取る。
転送装置を置いて、風呂は使った形跡を残す。
浩史が部屋に来たので、先にホームへ行って風呂に入る。
宿に戻って浩史と交替してデボラの店の商品を考える。
砂糖は決定。ガラスのワイングラス、陶器の皿?マント?少し高級感が欲しい。
ゲームの中で服を作っていた人が居たことを思い出す。
シルク、カシミヤ、ウールなどの代表的な生地は端末ショップで購入できたと思う。
シルクは目立ち過ぎ、デニム生地だけだと地味かな?生地はデボラとアネットに任せよう。
浩史はホームから戻って来ると街に出掛けた。異世界を十分に楽しんでいる。
俺は浩史に頼まれたハンヴィーが牽引するトレーラーを作る。
以前に書いた馬車の図面をから足回りとフレームだけ残してフレームに荷台を付ける。
連結用のブラケットも書き込み、2輪タイプのトレーラーの図面が完成?
足回りはハンヴィーのパーツを購入して、フレームと荷台を工作室で作成。
連結は簡単に外れない様にした。
購入したパーツと作成したパーツを整備場に運び組み立てる。
ハンヴィーとの連結に多少時間が掛かるが完成したので今度試乗してみる。
子供達に店の手伝いの銀貨5枚を渡して宿に戻る。
南門に集合して出発する。
「ハンヴィーの後に何か付いてるけど何?」
「トレーラーの連結用」
「もう出来たの?」
「出来たけど試運転して不具合があれば修正する」
「ありがと」
交替で仮眠を取りながら順調に進む。
それでも休憩になるとフィオナが浩史に話し掛けようと狙っている。
フィオナの仲間の3人も、一度でいいのでハンヴィーに乗せてくれと頼んでくるが、毎回キッパリと断る。
カーティスにも3回は苦情を言って、カーティスから4人へ注意するが懲りない。
野営場所に着いたのでブランドンやギリアンにも相談するが無視しろと言われた。
少し2人に嫌な事を聞いてみる「人虎が激怒する言葉はある?」
2人が苦笑いしてギリアンが「あるぞ。人虎だけではなく、人狼や猫人も怒る言葉はある」
ブランドンが「それを使うつもりか?」
「これ以上嫌がらせが続けば使いたい」
「気持ちは解らんでもないが、他では絶対言うなよ」
「どんな言葉か知らないけど、何もされてない人を怒らせる気はないよ」
ギリアンが溜息をついて教えてくれた「「獣のくせに」とか「獣風情が」など獣と同列に扱われると激怒する」
「俺がその言葉を言ったら2人も激怒してね」
「俺達も協力するのか?」
「言葉を言って2人が冷静だと絶対に罠だって言っている様な物でしょ」
「確かにそうだが、俺達まで巻き込むな」
「一応カリーヌとエルザにも話して来る」
少し離れた所にレリアと一緒に居るので少し話しに行く。
「少し話があるんだけど」
「何?」
「あの4人組を怒らせたいんだ。それで怒らせる為にギリアンに教えて貰った言葉を使おうと思っているけど、2人は怒らないで」
カリーヌが「怒りませんけど、不愉快です」エルザも頷いている。
「あいつらの嫌がらせを止めさせたい、他に方法がある?」
「怒らせてどうするの?」とレリアが聞いて来る。
「両足の骨を折る。流石に懲りるだろ」
「やり過ぎよ」
「回復魔法があるのに?殺されないだけいいだろ」
「揉め事はごめんよ」
「俺も避けたいけど相手次第」
「私達は関わらない様にするよ」
「そうして」
これで根回しは終わった。取り敢えずは、更に距離を取って関わらない様にする。