第15話 子供達のバイト
8時に多目的ルームに全員集まったので鳳龍店に行く。
「浩史も行くの?」
「一応、覚えようと思って」
開封した砂糖箱と開封前の砂糖を入れた箱、バナナを持って鳳龍店へ転送する。
9時の開店に合わせて掃除と商品の金額を覚えて貰う。
デボラには、用意をした板に商品名と金額を共通語のバスクル語で書いて貰いカウンターの横に置いておく。
砂糖瓶は棚に大小各10個並んでいるので漏斗を使って零さない入れ方を見せる。
休憩室には配達先の店と量を書く板と入れ物を置いておく棚を説明する。
開店すると5人が待って居たので子供達に手本を見せる。
「いらっしゃいませ!」と声を掛けて先頭から接客する。
5人全員が砂糖を買いに入れ物を持って来ていたので、大小を確認して子供達に砂糖を入れて貰う。
3人目からデボラかマールに応対して貰いアネットとロンが砂糖を詰める。
ついでにバナナや食器を買って行くお客もいたがデボラとマールは計算も問題なかった。
店は子供達に任せても大丈夫みたいなので浩史と休憩室で馬車とハンヴィー改造のどちらにするか話す。
「いつまで隠すの?」
「ホームの場所は公開しない。銃と支援機は見せてもいいが変な奴が群がって来そうだし、出来れば隠したい」
「そうすると選択肢はないよね」
「ハンヴィーは武装も外せるし例外にするか」
「いっその事、銃と支援機は普通に使ったら?」
「銃や支援機欲しさに攻めて来たら?こっちが休む暇もなく攻撃されたら負けるぞ」
「2人倒すのに何千も兵を失う事をするかな?」
「初めから知っていれば攻撃はしないと思うけど、知らなかったら?途中で引くに引けなくなったら?」
「それだったら王様に一度力を見せたら?それと休む暇もなく攻撃されてもこっちが付き合えば負けるけど逃げたら。考え過ぎじゃない?」
「王様と一度会ってみるか」
「どうやって会うの?」
「日本からの手紙を作って貢物を渡せばいいんじゃない?」
「いきなり会ってくれる?」
「いきなりは無理だろう」
「手紙だけ出す?」
「ここの領主だったら直ぐに会えるかな?」
「アレクシスさんかマシューさんに聞いてみれば?」
「聞いた方が早いな。昼食を食べたら行って来る」
一旦ハンヴィーの件は保留にした。
砂糖の配達先を教える為に浩史、ロン、アネットと一緒に高級料理店と男爵家を回って場所を覚えて貰う。
鳳龍店に戻り今度は浩史がデボラ、マールを連れて配達先を回って貰った。
お昼になったので、子供達を一度ホームに帰して食事をする間、浩史と店番する。
子供達が戻って来たので俺達もホームに帰り食事を済ませて鳳龍店に戻るとアレクシスさんが訪ねて来ていた。
休憩室に通して紅茶を出す。
「俺達もこれから訪ねて行こうと思っていたところです」
「私もご報告にお邪魔しました」
「報告とは?もう返事が来ましたか?」
「いえ、手紙を出した事とオルトン様が色々調べている様です」
「???」
「兄貴、魔法師ギルド長だよ」と浩史は覚えていた。
「アレクシスさんに何かしてきましたか?」
「いえ、私には何も、日本の事とマサキさん達の事を聞いて回っている様です」
「その程度でしたら放置しておいても問題ないでしょう。何かして来たら遠慮せずに言って下さい」
「ありがとうございます。それでマサキさんのお話とは?」
「王様か領主様に会いたいのですが、どうすればいいですか」
「国王にはお会いした事はありませんが、領主様ならお会いしたいと手紙を使いの者に持って行かせ返事を貰うのが通常です。緊急の場合はマサキさんがそのまま訪ね領主様が緊急だと判断されたらお会い出来ます」
「王様も同じですか?」
「同じだと思います」
ホームに行きアレクシスさんに教えて貰い手紙を書いてみる。
手紙は日本語で書いた物を端末に取り込んでバスクル語でプリントアウトし徳川皇帝とサインをする。
浩史に作って貰った日本国 徳川皇帝の印鑑で封蝋してみる。
アレクシスさんには全て確認して貰ってその都度修正をした。
内容は日本の国民が異世界に迷い込んだので正樹大公の調査に協力して欲しい。日本国とナミル王国は約1000ファル離れているので正樹大公に対しての協力が難しい為、3ヵ月に一度の補給が限界。お礼に3ヵ月に1度、和紙1000枚、紙1000枚を届ける。
因みに1ファルは5~6km。
アレクシスさんにも1000ファルも離れていると貿易は考えないだろうと言われた。200ファル程度が限界みたいだ。
ついでにアダマンタイン、オリハルコン、ミスリル、ウーツ鋼について知っている事を教えて貰う。
殆どが鍛冶屋のファビオから聞いた話だったが色について聞きたかった事が聞けた。
「アダマンタインは硬くて重い、色は黒に近いグレーで薄く光ることもありません。オリハルコンとミスリルは軽くて魔力を溜められます。どちらも薄く光りオリハルコンが青白く、ミスリルが白銀ですね。ウーツ鋼は別名ダマスカス鋼と呼ばれています。ダマスカスのダンジョンからよく見つかるからです。特徴は鋼より硬くて軽い木目の模様です。」
「このインゴットですがオリハルコンですか?」
「青白く光っているのでオリハルコンで間違いないです」
「オリハルコンとミスリルですが魔法を切れますか?」
「切れますし防ぐ事も可能です。オリハルコンとミスリルで作った鎧は魔法を防ぎます」
「どちらが優れていますか?」
「オリハルコンの方が若干優れています」
アレクシスさんからも異世界の事を色々聞かれて、科学者ではないので詳しい事は解らないと前置きをして空を飛ぶ原理、引力、宇宙について知っている事を説明した。
子供達を紹介して、護衛の依頼を受け王都に行くので長くて13日程留守にする事を話し、何かあれば子供達に話して欲しいとお願いする。
子供達にも何かあればアレクシスさんを優先と言って、子供達でアレクシスさんを自宅まで送って貰う。
店番は浩史に任せてファビオに約束したお酒を届ける。一応王都に行く事を伝え子供達が困っていたら力になって欲しいと頼んでおいた。
鳳龍店に戻り浩史に「オリハルコンで弾芯を覆ってFMJ弾を作ろうと思うけど、どう?」
「何でFMJ弾?AP弾にしたら?」
AP弾の方が貫通力は高いのでAP弾にする。
端末に登録してからアサルトライフル用の7.62×51mmNATOのカスタムAP弾を600発、12.7×99mm NATOのカスタムAPHE弾を70発、工作室で作成して半分を浩史に対魔法用として渡す。
「対魔法用って何?」
「魔法障壁やマジックシールドを破れる様に作った。実験はしてないけど」
「機会があったら使ってみる」
「護衛の足だけど明日の顔見せの時に聞いてみる」
「ハンヴィーを使うの?」
「護衛も馬を使うなら4輪バギーを使う」
「歩きだったら?」
「様子を見て決める」
「バギーは普通に使うの?」
「使っていいよ」
7時になったので店を閉めて余ったバナナを近所に配る。
子供達に銀貨5枚を渡すと今日は屋台で夕食を済ますと出掛けた。
浩史をホームに帰り明日の予定を話す。
「護衛の顔見せは昼だけどそれまでどうする?」
「久しぶりに子供達に付いて行く」とハンドガンを出してAP弾に交換した。
「俺も行こうかな」
話していると子供達も帰って来たので今の階級を聞いてみる。
デボラはF級で他はG級だった。
早くF級まで上げる為、昼までは子供達に付き合って魔物狩りをする。
APHE弾:徹甲炸裂弾。遅延式の信管で弾が装甲を貫いた後で炸裂する。