チューニアビリティワールド 前編
日本男児なら、誰しもがある年齢を迎えるとき、自分に隠されていた能力に気づいてしまうことがある。
少年達は自身の能力を気づいてしまったがあまりに、謎の目に見えない組織に狙われることになってしまうのだ。
だが、少年達は世界の平和を守るため、己たちの能力を駆使して世界を救うのだ。あるときはひっそりと、またあるときは堂々と。
そして、この物語は彼らの激闘の戦いの記録である。
灰色に染まった空の下。
無機質な町の中でその戦いは繰り広げられていた。
白い炎と黒の炎が互いにぶつかり合い、しのぎを削っていた。
本来の現実世界ならありえない話ではあるが、ここは現実世界ではない。
ここは能力深層世界。別名チューニアビリティワールド。少年達の現実では発現できない能力がここでは発現できるようになっているのだ。
少年達の炎はお互いを飲み込まんとするが、どちらも果敢に攻め合っている。そして、そんなことが続けば、当然衝突点に膨大なチューニエネルギーが蓄積される。
そして、チューニエネルギーが限界を迎えると、エネルギーを爆発に変えてあたりに衝撃波を撒き散らした。少年達はその衝撃波で後ろへと後退して、距離をとるがお互いにらみ合ったままであった。
黒いほうの少年が呟く。
「さすが杉並の《白虎》と呼ばれた能力者だな…」
と言って黒いほうは不敵に笑うと、白い方もなぜか嬉しそうに口角を挙げながら答える。
「おまえこそ、練馬の《ダークナイト》と呼ばれただけはある…」
そう言ってサイドにらみを利かせると、お互いが嬉しそうに口元が笑みを浮かべている。
そして、互いに再度刃を重ねようとしたとき思わぬ乱入者が入った。
突然目の前に激しい衝撃波を撒き散らしながら、着地したのは、黒のマントを被った少年であった。
「くくくっ…今宵もなかなかに骨がある獲物が揃っておるな…」
「っ!まさかお前は…《血の貴公子ブラッディロード》!?」
とダークナイトが驚くと、その言葉を聞いた白虎もまた驚きの表情に染まる。
「なっ!こいつがあの《血の貴公子ブラッディロード》だというのか…!」
白虎の驚いた様子をみて、ブラッディロードは感心した表情を見せる。
「ほぅ…私の名を知っているとはな…」
と笑ってみせるブラッディロードに2人とも背筋に冷や汗が伝う。
「おい…ダークナイト…ここは一時共同戦線といかないか?」
「あぁ!賛成だ!」
と2人頷くと、ブラッディロードは嬉しそうに笑う。
「くくくっ…いいぞ!2人まとめて掛かってくるが良い!」
そして、辺りにはこの騒ぎを聞きつけて、能力者のギャラリーが集まっていた。
「おい、白虎とダークナイトがタッグを組んでるぞ!」
「まじか…あいつって伝説の《血の貴公子ブラッディロード》なのか!?」
「すげぇ、こんな戦いを見れるなんて今日の俺はついてるぜ」
ビルの上や遠くから見つめるギャラリーを見て、ブラッディロードは嬉しそうに笑う。
「くくっ…こんなに注目を集めるのは久しぶりだなぁ!いいだろう!私の本気を見せてやろうではないか!さぁかかってくるが良い!」
そう宣言するブラッディロードを一睨みして、白虎とダークナイトはお互いに頷きあって攻撃を開始する。
「喰らえ!すべてを消し去る黒き炎!ダークフレイム!」
「すべてを白に塗りつぶす業火の炎!白炎!」
その2つの炎は互いに混ざり合いながら、ブラッディロード目掛けて飛んでいく。
「くくっ…我が声を聞き、発現せよ…ブラッディソード!」
そう言うと、ブラッディロードは右腕を引っ掻いて傷から血が出てきて、剣の形になる。そしてそれを一振りすると、彼らの炎と衝突しながら2つに裂けてブラッディロードの横を掠めていく。
「「な、なんだと!?」」
と白虎とダークナイトの驚愕の声が辺りに響く。
「ふむ…こんなものなのか?《白虎》と《ダークナイト》よ」
と挑発してみせると、2人とも苦虫を噛み潰したような表情を作る。
「まだだ!まだこんなもんじゃねえ!」
「俺の本気を見せてやる!」
2人はお互いに攻撃をするが、息が合っておらずもはや最初の攻撃よりもひどい状態であった。
「はぁ…つまらんなぁ、期待していたのだが、期待はずれもいいとこだ…では、そろそろ終わりとするか」
と言って、ブラッディロードは自身のもつ剣をぶら下げながら二人に近づいていく。
そして振りかぶったとき…
「待ちたまえ!」
と凛と響く声がして、誰もがその声の方角を振り返ると、一番高いビルの天辺から一人の仮面を被った少年が居た。
そして、少年は多くの視線が自分に集まったことを確認した上で、決めポーズをとる。
「強きを砕き!弱きを助ける!正義のヒーロー!《チューニライダー》ここに参上!」
と一際大きく宣言すると、辺りからざわめき声あふれ出す。
「まさか!あれが噂のチューニライダー!?」
「まじかよ…やべえぞ、これ頂上決戦じゃないのか」
「くそっ!俺も参加したくなってきたぞ!」
そんな中で唯一冷静だったブラッディロードが興味深そうにチューにライダーを見つめる。
「ほぉ…貴様が噂の《チューニライダー》か…なかなかに興味深い。だが、他にも気配を感じるぞ?」
と言ってブラッディロードは別のベルを見つめる。
すると、突然黒い影が現れて、そして人が姿を見せた。
「さすがは《血の貴公子ブラッディロード》だな。俺の気配に気づくとはさすがだ」
と言ってビルの屋上から現れたのは眼帯をつけて迷彩柄のマントに羽織っている少年だった。そして少年の手には黒く輝く1丁の銃が掲げられている。
「貴様の風貌…噂に聞く《闇の解答者》か…」
とブラッディロードが尋ねると、少年は頷く。
「あぁ、俺が《闇の解答者》だ。そしてこの愛銃は《聖魔銃アンサラー》貴様を敗北させる銃だ。覚えておくんだな」
「くくっ…では覚えておくとしよう。ではパーティを始めよう!」
そして、少年達の熾烈を極める能力戦は今日もどこかで続いている。
うん…なんか心が…うん。
何も言うまい