新展開ですっ!
「ど、どうしたんですか?」
深谷家にやってきて、一週間が経った。
深谷ママの家事のお手伝いをして、未散とつかさの二人を学校に送り出す。
慣れないながらも、なんとかこなしている作業を終え、私が一息ついた所で、私は深谷ママに呼ばれリビングに向かった。
深谷ママはリビングの、家族皆で座れるテーブルに腰かけ、私を待っていた。
何事かあったのか、深谷ママは手元の資料を一瞥し、真剣な表情で私を見て、対面に座るよう促す。
「…………」
私は、そこに腰かけた瞬間、無性に不安になった。
もしかして、私が迷惑をかけた結果、出て行けと言われるのでは? と、そう思ったからだ。
わ、私……なにかしちゃった!? ……しちゃったよね……。
ほんの一週間。
それだけの短い期間にも関わらず、私には身に覚えが多数あった。
洗い物の最中に食器を割ってしまったり、買い物に出かけて、買い忘れたり、洗剤の量を間違えて泡だらけにしたりと、ダメッぷりを公然と披露してしまった。
いくら深谷ママが優しく、心が広いとはいえ、物事には限度というものがある。
私は唇を噛み、覚悟する。
これからどんな事を言われようとも、すべては私自身が招いたことだ。
受け入れよう!
そう思い、顔を上げると、深谷ママと目があった。
短いながらも楽しかった日々が走馬灯のように脳裏を駆け巡り――――
「あら? 姫ちゃんったら……泣くほど学校に行きたかったの?」
「ほぇ?」
――――砕け散った。
深谷ママの手には冊子が握られていた。
『私立英林中学校転入案内』
ああ、私……またやっちゃったんだ……。
ズゥーンと沈む。
幸運なのは、私の失態を私以外は誰も知らない事。
だから、私はそれを誤魔化すように、過剰に喜んだ。
「わ、私! 学校好きなんですっ! たぶん!」
「そうなの!? それは良かったわー。ここはね、つかさも通ってる所で、教職繋がりで私も理事長と面識があるのよ。そこで姫ちゃんの事を相談したら、快く受け入れてくれるらしいの! つかさのクラスに入れてくれるらしいから、何でも頼ってくれていいからね!」
「えー? わー! すっごーい!」
こうなったら、ヤケクソダー!
私が本来なら未散と同じ高校生だなんて事実はどうでもいいや! ヤッホーイッ!
そして、冷静になった。
待って、私十五歳だよ? 中学校なんて大丈夫かな? 浮かないかな?
確かに、私には高校生なんて絶対に無理だろう。
高校は受験などというものがあるらしいし、中学校に一、二か月しか通っていない私には、到底パスできるものではない。
かといって、今から中学二年生となると、卒業する頃には十七歳近い。
その頃には、きっと大人の色気というものも出てきているはずで、純粋で可愛らしい子たちの中で浮いてしまうのではないかという懸念を捨てきれない!
「姫ちゃんの見た目から最初は英林と同じ系列の小学校にお願いしようかと迷ったんだけど……つかさや未散との付き合い方を見てると、中学の方がいいかな? と思ったんだけど、どうかな?」
「…………はい、いいと思います」
小学校……小学校……。
え? 私って幼く見られるとは思ってたけど、そこまでなの?
胸だってけっこうあるんですけど……。
そ、それとも何!? 今の小中学生ってそんなに発育いいわけ!?
未散クラスが当たり前なわけ!?
衝撃に、私は机にダラッと倒れ込む。
「あら? 姫ちゃんどうしたの?」
「……な、なんでもないです……」
「そう? なら今の話このまま勧めちゃってもいい?」
「……お願いします……」
ノーとは言えない。
勉強……ばっちこい! やる気は人一倍あった。
家事ができない上に、頭も悪いじゃ目も当てられない。
せめて、勉強くらいは人よりできるようになりたかった。
そのために、多少の恥は飲み込もうと思った。
何より――――
いきなり女子高生の中の放り込まれるよりは、女子中学生の方がマシ……だよね?