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第一章 三十三話

「ちょっと!さっきのはどういうことなの?!」

「いや、だからね・・・」

「またそうやってはぐらかす!私はもう十四よ!立派なレディなの!それに主席の娘よ!だからあなたには私に説明する義務があるわ!」

「義務っていってもなぁ・・・」

「きぃーーっ!はっきりしなさいよ!」


 訓練場から退散したあとアンジェラを連れて何処かに潜もうかと思ったけれど騒ぎを聞きつけた護衛の皆さんとばったり出くわしてヴィスから説教を受けた。そしてその後アンジェラからは質問攻めだ。

目の前の少女は何が何でも僕の口から説明させたいらしい。

 どうにかこの状況を打破しなければ、という思いもあるのだがそれが見つけられない。自分で蒔いた種だけど刈り取るのがとても難しい。困ったものだ。

 と嘆いていると向こうから見慣れた服装の人物が歩いてくるじゃあないか。これは僥倖。


「やぁ、ジン」

「うむ。ショウか、どうした?騎士として立派に仕事をしてるのか?」

「いいえ!彼ったらぜんっぜん私の話を聞かないのよ!それに隠し事までしてるみたいだし!アンタからもなにか言いなさいよ!」

「・・・大変じゃのう」


 にやにやと笑っているジンになぜか殺意が沸いてくる。くそう。他人事だと思ってからに。


「わしは人じゃないしのう」

「ようし。ごうとぅお外だ、こんちくしょう!その腐った根性叩き直してやる!」

「面白い!たかが人間の分際で龍に説教か!」

「そっちこそ!龍だからって胡座かいてのほほんとすごしてんじゃねえぞ!」

「ちょっと!私の話を聞きなさいよ!」


 いかん。すっかりこの旅で身についてしまったジンとのコミュニケーションでカオスになるところだった。慌ててジンに目で合図すると向こうもわかってくれた用で無駄にいい笑顔で頷いてくれる。


「ふぅ・・・話をしてやったらどうじゃ?いつかはバレることなんじゃからのう?騎士様?」

「うぐぐ・・・果てしなくムカつく言い方だな」

「そうよ!このぽんこつ大男の言う通りよ!さっさと白状しなさいよ」

「ぽっ!ポンコツとはなんじゃ、ポンコツとは!わしだってお主を助けるために活躍したのじゃぞ!」

「あんまり見てないんだもん!」


 いかん、埓があかない。仕方ない。


「わかったよ。後で説明するから。これでかまわないだろう?」

「ふん!まあいいわ。でも今後は騎士として私の言葉にはすぐにはいと答えること!いいわね?」

「それは勘弁こうむる」

「なんでよ、むきー!」


 ジンと戯れついたあと昼の鐘が鳴ったのでヤミナを誘って昼食を食べに食堂へ・・・は行かず、来賓室で食べることになった。ヤミナとそわそわしながら待っていると給仕さんが三人ほど入ってきてテキパキと食器を並べてゆく。ヤミナの身分は奴隷で本来なら僕たちと一緒に食事はできないはずだか無理をいって一緒に食べることができるように計らってもらった。ありがたいことだ。


「本日は前菜のスープとリザードマンの尻尾のソテーをご用意しております」

「リザードマン・・・美味しんですか?」

「あら?食べたことないの?なかなかの美味よ。ちょっと硬いところがあるんだけどそれが好きな人も多いみたいね」


 そうなのかー。と感心している隙に目の前にはスープが運ばれてきた。見た目はコーンスープのような感じだが真ん中に浮いている赤い人参のようなものはなんだろう。気になったので鑑定してみる。聞くより早いな。


名前 灼熱コーンのポタージュ

説明 湿地帯で取れる灼熱コーンを煮込んだモノ。そのままでは辛いので中和するために砂糖と一緒に煮込むのが一般的。


 灼熱コーンって。すごく辛そうだけども大丈夫なんだろうか。こう見えて僕の舌はお子様よりもお子様な舌なのでからいのはノーサンキューなのだ。そんなことを思ってスープを見ていると不審に思ったのだろうか、給仕の一人が声をかけてくれた。


「こちらの料理はそのままですと辛いですので浮かべてある砂糖を溶かしてからいただくとよいかと思いますが」

「そ、そうですか。ありがとうございます」


 言われた通りに砂糖を溶かして食べてみる。うん。美味しい。辛い、かと言われれば辛くない。けれどどこからともなくぴりっとしたモノがある感じだ。それを砂糖がうまい具合に中和して且つ、おいしさを引き立たてくれてるようだ。

 スープを飲み干すくらいで次の料理、リザードマンの尻尾のソテーが出てきた。見た目は完全に鶏肉だったけれど味は豚肉だった。さっぱりと塩、胡椒で頂いた。


「いやあ、美味しかったよ。ありがとう」

「いえ、例を言われる程でも。私たちは自分の仕事をしただけですので」

「それでも構わないよ。僕の国では料理を作ってくれた人に礼をするのが当然だから」

『ありがとう』

「まあ、お上手ですね」


 微笑ましい会話をしているととなりの方で何やらブツブツという声が聞こえる。見るとアンジェラがなにか言いたそうにしている。僕たちの話を聞いていたのだろうか?


「アンジェラの遠慮しないで言ったらどう?」

「なっ!?別に私は・・・」

『はずかしいことなんてない』

「わ!私は恥ずかしいなんて別に・・・」


 ヤミナの言葉に顔を赤くして俯いてしまった。そのまま数秒間ブツブツ言っていたが急に頭を上げて給仕たちのほうを向くと、


「あ・・・あ、ありがとう。その・・・美味しかったわ」

「お、お嬢様・・・!」


 それだけ言うとアンジェラはぷいっ!と顔を背けて


「ほら!何してるの?食べ終わったら視察に行くわよ!急がないと置いていくんだから!」


 部屋から出て行ってしまった。しかしなんだ。いがいと可愛らしいところもあるじゃあないか。いつもそうやってれば可愛いのにな。と一瞬思ったが早くしないと本当に置いていかれそうだったので早めに食事を済ませる。


「ヤミナはどうする?一緒に来る?」

『いい。じんであそぶ』


 ジンはいつの間にかヤミナの遊び道具になってしまった様だ。でもジンがついているなら心配ないだろう。しかしなぜか不機嫌になってしまった。一体何がいけないのだろうか。だが今はそんなことを深く考えている暇はない。急いで追いかけないと、何をしでかすかわかったもんじゃない。


「じゃ、じゃあ僕は行くから。ジンになんでも言うんだぞ?怪我とかしないようにな。それから・・・」

『わかってる。はやくいって』


 僕があまりにも言うもんだから給仕さんたちもクスクス笑っていた。これって甘やかしてることになるのかなぁ?




「ほら、何してるの?!きちんと私の後を付いてきなさいよ!」

「いや、でもあそこに美味しそうな串焼きが・・・」

「美味しそうもへったくれもないわよ!大体さっき食べたばっかりじゃない」

「あれだけじゃあ正直お腹は張らないよ」


 アンジェラと話をしながら街中を散歩(アンジェラ的には視察らしい)する。ここはコルキの街とはまた違った雰囲気があって楽しい。コルキは騒がしくてデルニーはお祭り気分。似たようなもんだけども微妙に違う。東京と京都みたいなもんかな。行った事無いけど。

 道行く人はアンジェラに気が付くと手を振ったり声を掛けたりしている。アンジェラは優雅に笑ってそれに答えている。こうしてみると凄い美少女なんだけどなぁ。


「おっ!あんた、アンジェラ様の新しい騎士さまかい!?」

「しっかりやんなよ!ははっ!」

「前の奴よりはできそうだね!こいつを運んでくれるかい?!」


 あれ?いつの間にか酒樽運びを依頼されたぞ?なんでだ?まあ、軽く運べるからいいんだけど。その後もアンジェラは挨拶されたり差し入れがある中、僕だけなぜか荷物運びや買い物を頼まれた。というかこれ護衛の意味が殆ど無いんじゃないのか?!


「ありがとよ!騎士さん!」

「なかなかやるじゃねえか!がははっ」

「ど・・・どうも」


 なんと言っていいのか分からないので半端な返事になってしまう。いくつか依頼(?)をこなしているとアンジェラも僕が居なくなった事に気が付いたようだ。


「もうっ!何処に行ってたのよ!あなたは私の騎士でしょ?」

「ご、ごめん・・・いろいろとあったんだよ」

「ふん、まあ、いいわ。じゃあ次は向こうの教会へ行くわよ」


 何故か納得した様子のアンジェラはそのまま先に見える教会の方へと歩みを進める。まあ、理由を細かく聞かないのならこちらとしてもありがたい。サボってたとはいえないから。


 教会は何処の町にでもある物で、ゲームなんかで見慣れた白い壁の建物がそれだった。ただし、教会に来て神様に祈ったりしているのは基本的には人間だけらしい。他の種族にはそれぞれ信仰する神様が居るとのこと。


「これはこれは。ようこそ、アンジェラ様。今日も来てくれたのですか?」

「司祭様、ごきげんよう。当然でしょ?私の義務なんだもの」

「さすがはアンジェラ様でございますな」


 中に入ると奥の方から白い法衣をまとった白い髭を伸ばしている人物が歩いてきた。結構な年だと思うのだけれど背筋が伸びてピシッと歩いている。白い法衣がかなり似合っていて如何にも「司祭」という感じだ。

 司祭さんは一通り挨拶を終えたのか、僕の方を向いてじっと見つめてきた。


「・・・この方は、アンジェラ様?」


 ちょっと声が低くなった。警戒・・・されているのか?だとしても何でだろう。


「彼はショウよ。私の新しい騎士よ。ほら、あなたも挨拶しなさい」

「ど、どうも。ショウ・キリシマです。アンジェラの騎士になりました・・・?」

「なんで疑問系なのよ!ねぇ、司祭様?聞いてくれるかしら?ショウってばね」


 嬉々として僕の事を語りだそうとするアンジェラを司祭さんはじっと見つめていたけれどてをポン、と打って、


「アンジェラ様。それならばここの子供達に話してやってはくれませんかな?アンジェラ様が語るのなら子供達も喜んで聞くことでしょう」

「・・・そうね。折角話すのだもの。沢山の人に聞いてもらいたいわね」

「い、いや・・・僕はそこまでしなくても」


 反論しようとしたけれど「騎士として目立つのは当然よ。少しは我慢しなさい」と言われて何も反論できなくなった。

 アンジェラは隣の建物へと行くというので僕も付いていこうかと思ったら、司祭さんに呼び止められた。


「すこし、よろしいですかな?」

「え?」

「別に構わないわよ。こんな所で騒ぎを起こすような不届き者は居ないでしょうし」


 そういえば、この世界は『神』が居るんだったな。だからどんなに戦争をしようとも教会だったり神に関係するところは不可侵領域になるらしい。むかし破った者たちが居たそうだけど、全員天罰で死んでしまったとのこと。

 そんな訳でアンジェラも大丈夫、と言っていたので僕は司祭さんに付いて別の部屋へと向かった。


作者「閲覧ありがとうございます。三十三話でした。」


ショウ「相変わらずスローペースだけどね」


作者「うるさいやいっ」


ショウ「それはそうと、一つ疑問に思ってることがあるんだけど」


作者「何だい?なんでも答えてあげようじゃないか」


ショウ「この作品って一応ファンタジーでしょ?」


作者「そうだけど?それが?ファンタジー要素があふれんばかりにあるじゃないか」


ショウ「いや、もっとエルフとか獣人とか出てくるもんだと思ってたんだけど・・・」


作者「・・・・・・」


ショウ「半分くらい人間のおっさんだし。ファンタジーの代名詞のエルフとかドワーフとか全然出てきてないんだけど」


作者「じ・・・ジンが居るしっ!」


ジン「そうじゃそうじゃ!わしを忘れるなっ!」


作者「それにこれから沢山出していくし!別に心配される事なんてないんだからねっ!」


ショウ「分かってくれたらいいんだけど・・・」


作者(本当は全然気が付かなかったなんて言えない・・・)


ジン「わしに活躍の場を与えるんじゃ!今のままではギャグ要員にしかならん!」


ショウ・作者「それでいいなじゃないかな?」


ジン「くそおおぉぉぉぉ!!」

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