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第一章 十一話 強くなったと思ったらやばいことになってました。

閲覧ありがとうございます。

「・・・すまなかったな、坊主。その服を見ると頭に血が上っちまった。ほれ、てめえも謝るんだ」

「す、すみませんでしたっ」

「い、いえ。そんな・・・」


 あの傍迷惑な戦闘から半時間ほど経ったのだろうか、僕とヤミナはギルド「貫かれた盾」のリーダー、赤髪と赤い鎧が印象的なアッシュ・ソスティーと長い黒髪にきつい目つきが特徴のカール・テイラーに連れられて東区のとある料理屋さんに来ていた。

 店内は広く落ち着いた色の調度品でまとめられている。その店の奥に四人で腰掛けている。出されている料理はどれも中華料理を思わせる味付けと見た目をしていた。ヤミナは先程の事があるのかこちらに身体を密着させている・・・がちょっと、あたってますよ。服の上からでも分かるこの感触ッ!

 ・・・はッ!僕は何を!いかん、いかん。煩悩は世界の向こうへ捨て去るのだ。


「しかし坊主は強いな。俺もかなり本気だったんだが」

「まあ、偶然ですよ。僕の剣の師匠が良かったんですよ」

「ほう・・・?」


 出任せに嘘をいったが果たして彼に通じたのだろうか。アッシュは暫くこちらを怪しいと思って睨んでいたがやがて諦めたのか視線を戻した。カールの方は相変わらずのきつい視線を送ってくるけど。


「それより坊主は何していたんだ?ま、俺が言っても説得力は無いがあそこは貴族区、普通は一般人は用が無い限り来ないところなんだが」

「実は・・・」


 かくかくしかじか。と簡単に二人にギルドから「魔道器強奪事件」のあらましを説明する。アッシュは腕組みしたまま僕の話を聞いていたけどやがてうんうんと頷いて、


「確かにそういう話は耳にするな。被害があったのは今まで五件。いずれも貴族区にすんでる人だ。さっき俺と戦った場所、あそこもつい先日魔道器が盗まれた、とか騒いでいたな。カール、お前はどうだ?何か聞いたか?」

「なんでも騒ぎがあった貴族の家はどこも貴族区でも有数の実力者の家だとか」


 おお。アッシュに続きカールからも思わぬところから情報ゲット。事件の犯人は貴族に的を絞って犯行を重ねているみたいだ。今はこれくらいしか分からないけど。


「ふむ。詫び、というわけではないが俺にはこれくらいしか出来んな。もしくはもう一度戦うか?坊主の力は底知れないからな。純粋に武人としても興味が沸く」

「ちょっと、団長?!」

「騒ぐな、カール。冗談だ。坊主の顔にもはっきりと嫌だと書いてあるしな」


 僕の顔を指差してがっはっは、と笑うアッシュ。しかし団長と副団長がそろってこんなところに居て組織は大丈夫なのだろうか。そう訊いてみると案外心配ないそうだ。今までの任務と比べて戦争でもなく警備だけで暇だとのこと。それにしても僕を暇つぶしの相手に選ばないで欲しい。ほら見ろ、ヤミナが余計に小さくなってしまったぞ。


「さっきのことは悪かったって。このケーキあげるから、おいしんだぜ。一口食べてみろよ、な?」

「    」


 カールが手元にあるケーキをヤミナにあげてご機嫌を伺おうと必死になっている間にアッシュが僕に再戦を申し込んできたけれど丁重にお断りした。ヤミナはぷいっ、と顔を背けているけど。


「そうか。お前ほどの使い手は今まで出会ったことがない。それこそ俺が今までで一番強かったと思うドラゴンよりも強いと思うんだが」

「褒め言葉として有り難く受け取っておきますよ」

「俺のところに来ればもっと強くしてやるぞ?」

「・・・それもお断りをします。まだまだ世界を見たいので」


 僕の言葉を聞いてアッシュは満足そうに頷いて席を立った。それにあわせるようにカールのほうも席を立ちアッシュの隣に立って軍隊式敬礼をした。びしっと決まっている。


「さて、俺はそろそろこの町を去る。もともと俺らは一箇所にとどまるのは好きじゃねえからな。それに思わぬ収穫もあったからな」

「そうですか。でもいいんですか?確か公爵に依頼されてるんじゃ」

「俺は依頼は受けるが縛られるのは好きじゃあねえんだ。とくにおたかくとまった貴族様には、な。それにあの貴族様の事だ、すぐに代わりを用意するだろうよ」

「そんなもんですかね」

「そんなもんだ。じゃあな。今度あったら勝負しろよ」

「じゃ、じゃあなッ!ヤミナ」


 アッシュは軽く手を上げて、カールの方はヤミナのほうに向かって手を振っていた。気に入られたのかな?ヤミナは。しかし彼女はやらんぞ。出直してくるんだな。

 二人が去る所をヤミナは若干名残惜しそうに見つめていた。なんだかんだ言って易しくしてくれたカールが気になっていたのだろうか。それにしてもさっきまで自分を殺そうとしてる人たちと楽しくおしゃべりしてたなんて、なかなかどうして、自分で言っては何なんだけど僕もかなり図太いというか変な神経してるな。

 しかし今思い返してみても良くあんな強い、化け物みたいな人と互角に戦えたものだ。魔法が使えたら良いのかもしれないけれど今は魔法と使うという考えはない。後衛はヤミナがいるから僕は前衛で補助魔法、若しくは回復が使える魔法剣士というやつがいいのかもしれない。

 今後も何時あんな化け物と戦う事になるか分からない。魔法について理解しておいたり剣術を鍛える事もしていかないといけないな。


「さて、僕達も帰ろうか、ヤミナ・・・ってええ?!どうしたの?」


 ヤミナに帰ろうと振り向いた時僕の目にはとんでもない光景が映し出されていた。ヤミナが僕のほうへと密着するように身体を寄せて挙句の果てに両手を僕の背中に回して顔をうずめていた。顔は見えなかったけれど

その瞳にはうっすらと涙が見えていた。


「また心配させちゃったかな。ごめんね。さあ、今日はもう帰ろう」


 こくこく、と頷くだけのヤミナ。彼女が本気で心配してくれてるんだと思うとなんだか嬉しくもあり悲しくもなった。彼女が心配する事がなくなるくらいに強くならないとな、そう心の中で誓った。


 宿に戻ってくると丁度ルークも帰ってきたところだった。かなりあわててるようだけれども何かあったんだろうか?まさかまた襲われたとか?


「良かった!ショウさん無事だったんですね!」

「え?ええ、まぁ。この通りにぴんぴんしてますけど・・・」

「貴族の敷地で戦闘をしたというじゃないですか!それに相手はあの最強のギルドと名高い「貫かれた盾」と聞きまして、大丈夫なのかと気を揉みましたよ!」

「す、すみません。迷惑をかけて」


 ルークの言葉に謝罪しか出てこない。昔から暴力団の抗争とかに巻き込まれていてこういう事態にも多少の耐性が出来ていたけれどそれはあくまで一人だったときの話だ。今は旅商人のルークに奴隷という身分だけれども僕にとっては大事なヤミナがいる。前みたいに振舞っていたら彼らの心配は底を尽きる事がないかもしれない。

 ならいっそのこと僕の能力の事を話そうか?僕が異世界から来てこの世界では誰もかなわないような凄く強い能力を持っている事を。


 いや、そんな事を話して得られるのは畏敬か警戒か恐怖か、いずれにしても話してしまえば今までのような付き合いはなくなると思うしヤミナからは恐怖を抱かれるかもしれない。それだけは避けたい。いくら僕が強くても僕は僕だ。ちょっとお節介焼きの普通の人。世界を救う勇者じゃなければ悪魔でもない。

 それにまだまだこの世界を見て、触れてみたいし。


「・・・あなた達が無事で何よりです。それよりもそのギルドからの直接の依頼は少しばかり頭の隅においておいたほうが良さそうですね。特にショウさんは」

「?はて、何ででしょう?」

「今日の戦いの事を聞くと貴族達は警戒してしまうでしょう。ここは大人しく騎士団の人たちの調査結果を待つ方が得策かと」

「そ、そうですね。その通りですね」


 乾いた笑いしか出てこない。意図的に今回の戦いが発生したわけじゃないにしろ、他人から見れば僕は暴力を振るう人に見えてしまうのだろう。おかしいな。僕は一般人のはずだったんだけれど。


「私のほうからも貴族達にショウさんのことを言っておきましょう。ま、あくまで一商人の言葉ですからどれだけの人が聞いてくれるのかは分かりませんが」

「いえ、それだけでも十分助かります。すみません、僕がこんな事を起こしてしまうばっかりに」

「何を。私の命があるのもショウさんのお陰。それにショウさんは驚くほど無欲だ。それなのに他人のために尽くそうとしてくれる。それに応えるのは当然の事ですよ」


 まじでルークはいい奴だ。いい奴検定があったら絶対一級だ。マジで。となりのヤミナも心なしかウルウルと来ている様だったけど何でなんだろう、さっぱり分からん。


「とりあえず騎士団のからから連絡が行くまでは冒険者ギルドの依頼などをしてはいかがですか?腕試しにはなるかと思いますが」

「・・・そうですね、ヤミナもそれでいい?」


 僕の問いかけに首を縦に振って答えるヤミナ。依頼って行ってもすぐに終わりそうだし明日からはゆっくりとコルキ観光でも出来るかな?あ、後でスキルと魔法に関して調べないとな。なんにしても時間が出来たのはいいことだ。有効に使わないと。

 まだ太陽も西に沈んでいなかったので依頼でもこなそうかと思ったけれどあんな事があったんだから、ということで部屋で休むようにルークからは言葉で、ヤミナは視線で、宿屋のバーンは豪快な笑いで圧力をかけられた。三人に押し切られる形で僕は部屋へと押し込められた。ヤミナの方はまだ元気そうだったので嫌がったけれど金貨を幾らか渡しておいた。後でルークと買い物にでも行くだろう。


「さて、と。それじゃ、ゆっくりさせてもらいますかね~」


 部屋に居てもただ寝るのも何だか、と思ったのでベッドに横になってからスキルの確認をする。



名前 霧島翔(20)

状態 健康

称号 初心者冒険者(体力上昇微)

装備 覇刀カラドボルグ 第Ⅷ師団特殊部隊〈ウロボロス〉装甲服一式

スキル 自動回復Ⅲ 状態異常無効Ⅱ 刀技能Ⅳ 抜刀術Ⅳ 格闘術Ⅰ 集中Ⅲ 縮地Ⅴ

    言語Ⅳ 無限収納Ⅱ 属性耐性Ⅰ 身体能力強化Ⅰ 鑑定Ⅳ 胆力Ⅳ 探知Ⅰ 隠密Ⅰ

    魔法Ⅳ(火・水・風・地・光・闇・雷・無) 詠唱破棄 


固有スキル リミッター(全能力半減)

      古今無双(戦うたび全能力強化〈極大〉)

      ????


 ほうほう・・・いろいろとおかしなことになってるがゆっくりと見ていこう。

 まずは全体的に見ると数字が増えている。縮地にいたってはⅤまで成長していた。ま、あれだけ使えばスキルレベルも上がるだろう。なにせ一秒間に十回は使ってたからな。あの時。そして大して使っていないのにも拘らず鑑定はⅣにまであがっている。Ⅳになるとなにが出来るのだろう、そう思ってぼーっ、と見ているとステータス欄に変化が起こった。


装備 覇刀カラドボルグ 破壊の神の力を宿した刀。世界さえも斬る事が可能。

   第Ⅷ師団特殊部隊〈ウロボロス〉装甲服一式 帝国で暗躍した部隊の服。現在魔力は充填されている


 お?もしかしてⅣになると詳細まで見えるようになるのか。ってかやっと詳細が見えるのか。なにか作為的なものを感じなくも無いがそこは無視しよう。しかし、これで装備品とかを調べやすくなるかも。いままでは名前だけだったし。試しに今寝ているベッドを鑑定してみる。


名前 ベッド(シングル) ふかふかのベッド。ここでなら快眠できそうだ。グッナイ。

状態 清潔 きちんと掃除されている。あなたのほうが不潔かも


 なんだか微妙にいらっ、と来る鑑定結果だな。僕のほうが不潔って。確かに汗はかいたし、砂埃が体中にこびりついてるけども。あ、なんだかかゆくなってきた。後で風呂屋へ行こうっと。

 確かに細かいところまで鑑定できるようだった。ちょっと嫌味なところが玉にキズだけど、役に立ちそうだ。

 続いて自分のスキルを確認する。・・・ふむ、戦闘で使うような自動回復や集中は上がっているけど使った事もなければ記憶も無い探知や隠密は未だにⅠのままだな。どうすれば使えるんだろう・・・そうだ、こういうときにこそ鑑定じゃないか。


スキル 探知 オートスキル。人や魔物の気配を感じ取れる、かも?

スキル 隠密 オートスキル。見つかりにくくなるかも、無いよりマシ。


 ちょっと待て。探知の説明は良いとしよう。かも?って付いてるけども。問題はッ!隠密、貴様だッ!いや、この場合は鑑定だッ!なにが無いよりマシだ!僕だって取りたくて取ったスキルじゃないぞ。勝手に付いてたんだ。しかも結構いい加減な説明だな。これでスキルレベルⅣっておかしいな。本当は違うスキルなのか?羊の皮をかぶったオオカミ的な。

 スキルレベルを上げるには・・・尾行か何かをすれば良いのかな?ま、今のところそれほど重要でもなさそうだし別に大丈夫だろう。次は身体能力強化だな。これはⅠのまま。アッシュとあれほど激しい戦闘をしたのにⅠのままなんて。ひょっとしてものすごく上がりにくいスキルとかか?とりあえず鑑定してみる。


スキル 身体能力強化 魔力を消費して各能力を高める。スキルレベルに応じて能力強化の上限は変わる。


 きちんとした説明をしている・・・だと・・・。なにかスキルに恣意的なものを感じるがこれも含めて鑑定、という事なんだろう。細かいことはあまり気にしない性質なので特にどうと言う訳でもないんだけど。本音を言えば、全てのものに対してこうしたきちんとした説明が欲しいところだけどこれはこれで個性的なのかも。

 後は個人スキルか。これは初めから簡単な説明が付いていて楽だな。一つ目は〈リミッター〉か。能力半減だけどアッシュと互角に戦えたことを考えると別に半減でも十分なんじゃね?と思ってしまう。それに先程鑑定して〈身体能力強化〉のスキルも使い方が分かったし、神様の言っていた僕がこの世界では敵う者がいない。という言葉が何となく飲み込めてきた気がする。

 そして僕が強い、という理由に拍車をかけているのがもう一つのスキル、古今無双。このスキルの能力は戦うたびに自分の能力が上昇するというもの。しかも効果は今まで見た中で一番効果が高い極大。


 僕が始めての戦闘でも明らかに戦闘スキルや経験で劣っている敵に互角以上の戦いが出来たのもこのスキルのお陰かもしれない。なにせ一撃一刀ごとに自分の能力は上がっていく。まさにチート。これじゃスキル〈リミッター〉が付くのも頷ける。このまま戦えばまさに古今無双となる日も近いかもしれない。

 だけどまだまだ。将来厄介な能力を持った敵やチート級の敵が出てきたときにしっかりと戦えるように訓練は欠かせないかな。本当は世界の命運を背負って戦う、なんて柄じゃあないんだけどこんな強い能力を持ったばっかりにそういった戦いに巻き込まれてしまった主人公達を僕は本で読んでよく知っている。

 そういった状況に置かれた際、後悔はしたくないので出来る事はやっておきたい。無論、魔王や戦争なんてことは起こらないのが一番なんだけど。


 そこまで考えたところで急に眠気が襲ってきた。なんだ?ふかふかのベッドで横になってるから?それともさっきの戦闘で予想以上に疲れてたのか。分からないけど少し眠ったほうが良さそうだ。もう瞼が重くて開く事もしんどい。あ、でもまだお風呂屋さんに行って汗を流してないな。それにヤミナのことも何だかんだいって心配だな。ルークが居るから大丈夫だと思うけど変な事に巻き込まれていないだろうか・・・・・・。


ヤミナのスキルを此処に記載します。別に作中で書くのがめんどくさいとかそんなんじゃないですから。


名前 ヤミナ・ベルマン(18)

状態 健康  

称号 ショウの奴隷(持ち主の能力に付随して能力上昇)

装備 雷帝のロッド 星屑のローブ 

スキル 魔法Ⅲ(火・水・風・地・光・闇・雷・無) 魔力自動回復Ⅱ 詠唱破棄Ⅳ 集中Ⅱ 消費魔力減Ⅰ 料理Ⅲ 掃除Ⅱ


補足 魔法はあくまで全属性が使うことができる、というもの。呪文を知らないヤミナは呪文をしらないので使えません。後々使えるようにする予定ですが。


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