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職業

作者: タイオンイチド

私、神田まゆは15歳。

私立中学の3年生だ。

私の着ているこの制服は

横浜ではかなり有名で

大人の間では価値のある

学校のものとされている。


ママはこの学校に受かった時、

満足そうにうなずいて言った。

「まゆにとっても似合うわ」

小学校の卒業式に子どもの通う

中学校の制服を着せるのは

ある一部のお受験ママの

ステイタスでもある。


ママの望みはわかっているが私は苦しい。

この学校にいるとどんどんと息ができず

授業中にも呼吸困難に陥りそうだ。

苦しさのあまり窓の外を見ると

バイクを止めて学校の桜をながめている

男子に目が留まった。

フェンス越しに桜を見上げる彼の目は

どこかまっすぐな気がして私は

ふらりと校庭に向かって歩き出した。


「乗せてよ」


彼は振り返った。

当たり前のようにアゴで合図した。


「乗れよ」


私たちは何日も一緒に走った。

お金がなくなると当たり前のように奪った。

走る彼のバイクの後ろから身を乗り出して

肩にかかるバッグを狙った。

足元のおぼつかない老人や

金のありそうな一人歩きのホステスから。

ある日、狙った女は骨のある奴だった。

いくら引っ張ってもバッグを離さず、

引きずられても離さなかった。

彼がバイクから降りて女を蹴った。

蹴られた女はよろけてブロック塀にあたり、倒れた。

彼はさらに動かなくなるまで蹴り続けた。

女の金を使ってラブホテルに行った。

しかし愛があったかはわからないが

お互いを確かめる前に警察が踏み込んだ。


刑事は言った。両親の職業欄。

私の両親は教師だった。

テレビ番組にコメントを頼まれるほどの。

教育論を語れるほどの。


「ご両親はりっぱな先生なのにね」


彼がゆっくりと顔をあげた。そして言った。


「両親が先生だと何か処罰に関係があるんですか」


刑事をまっすぐとみてそう言った。

桜を見上げたあのまっすぐな目。


日本国憲法第14条「すべて国民は、法の下に平等であつて、

人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、

政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」

※フィクションです

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