君は女神な
「君は女神な」
小5の時に耳元でいきなり囁かれたその言葉。
名前も存在さえも認知していない人からの言葉。
7年経った今でもずっと覚えている。
そしてその言葉は今も私を苦しめ、キラキラと輝いている。
貴方がいつかこの文章を見つけてくれますように。
小学校5年生の時、ふと誰かが友達と会話している声が聞こえた。
それは夕陽がキラキラと輝いた下校中の事だった。
「明日五年の子に告るんだ~」
一人の男子がそう言った。
何故かそれが私の事だと思ってしまった。
だが、そんなことはあるはずがないと頭を振る。
だってその人の事を何も知らないから。
家に帰りランドセルを置き、ふと考える。
「誰に告白するんだろう…」
だがすぐに違うことに目を向ける。
その時の私にとっては全く優先度の低い出来事だったからだ。
次の日、私は普段と変わらない日常を過ごしていた。
授業は受け流し、休み時間には友達と会話をする。
校舎は二つあった。
私の教室があるのはこっち。
私は友達とお手洗いに行った。
こっちのお手洗いは工事中で使用禁止だからあっちの校舎のトイレまで行った。
二つの校舎を繋ぐ渡り廊下、私と友達は何気ない会話をし歩く。
すると、前から男二人組が歩いてくる。
段々距離が近づいてくる。
一瞬の出来事なのに、時間がゆっくり流れる。
「君は女神な」
彼は確かに私の耳元で囁いていた。
私は急な出来事で脳がフリーズする。
どういうこと?と一瞬考えたが辞めた。
だって今は隣を一緒に歩いている友達との会話に夢中だから。
いつの間にか1日の授業は終わり、家に着き自分の部屋にランドセルを置く。
ふと思い出した。
「君は女神なって私に言ったのかな…?」
だって、その場には相手の友達と私の友達と私しかいなかったからだ。
ふと昨日聞いた言葉を思い出す。
「明日五年の子に告るんだ~」
もしかして…となるも、確信が持てない。
話したこともないし、相手が誰なのかも知らない。
考えすぎだと思い記憶に蓋をかける。
次の日
1学期が終わる前日の今日は大掃除がある。
大掃除は好きだ、だって授業をしなくて良いから。
大掃除の時は廊下に教室の机を全て出すのだ。
教室の掃除が全て終わり、私は渡り廊下にあるクラスメイトの机を持ち上げようとしたその時だった。
「持とうか?」
耳元でそう囁く声。
私は一瞬で昨日と同じ人だと気付いた。
勢い良く声がした方を振り向く。
そこに見えたのは少年の後ろ姿だった。
…確かそうだったはず。
もう何年の前の事だ、あまり覚えていない。
「あの人は何…」
私はあの人が気になり始めた。
ある日友達と何気ない会話をし、体育館と校舎を繋ぐ通路を歩いているとあの人を見つけた。
私は友達にあの人の名前を知らないかと聞いた。
そしたら友達はあの人について調べてくれた。
どうやら名前は××と言い、6年2組で野球部。
その日初めて彼の名前を知った。
私は当時5年生だったから彼は1個上で先輩に値する。
ある日
下校しようと階段を降りる最中に耳元で何か囁く声。
それは彼の言葉だってすぐに分かった。
でも周りに人がたくさんいて何と言っていたか分からなかった。
それが私の名前だったのか、それとも他の何かだったのかさえも。
私はもう彼の事が好きだった。
休み時間、お友達に囲まれながらLemonを歌う彼。
私はそんな彼に音痴なんて言ってしまった。
幼い私なりの不器用な愛情表現だった。
そんなの伝わるはずもなく、私は教室に戻る。
音痴なんて言ってごめんなさい。
貴方の歌声はきっと美しいよ。
二学期のクラブ活動を決める日
私は百人一首というクラブに入った。
当時百人一首のアニメにハマっていたからだ。
そして、クラブ活動は彼のクラスの6年2組で行われた。
背面掲示板にはクラス全員の絵日記が飾ってある。
私は彼の名前を探し、彼の絵日記を他の人にバレないように眺める。
「私と同じで先生に飽きられてる…」
私は心の中でそう思った。
絵日記には先生が赤ペンで感想を書いているのだが、その感想が絵日記をギリギリまで出していなかったような感想だった。
何故だか彼は普段から宿題をまともに提出していないように感じる。
私自身、ずっと長期休暇の宿題を提出していなかったから、そんな感じがした。
あくまで私が感じたことだ。
事実は知らない。
ふと、私は彼と同じなのではと考えた。
とても恥ずかしい話だ。
時が流れるのは早く、もう彼の卒業式が近づいた。
あの三回の囁きから彼は何もしなくなった。
私は彼に告白しようか悩んだがそんな勇気も無く卒業式も過ぎる。
私は小6になった。
1年生の入学式。
見覚えのある名字が新入生で呼ばれる。
彼と同じ名字だ。
私はそれだけ思い、入学式が終わる。
保護者が会場から出て行く。
そんな時だった。
彼と目が合ったのは。
私は驚いた。
中学1年生になったはずの彼がそこにいたからだ。
後に彼の名前を教えてくれた友人に、妹がいると告げられる。
今ではそんな思い出も疑わしく思える。違う人だったのかも。
何気ない6年生の日々。
私は新しい人を好きになりながらも密かに彼を想う。
学校がコロナで休校になる前に友人から彼のLINEアカウントを見つけたと聞いた。
彼のアイコンは、二刀流が似合う人が主人公のゲームの中に閉じ込められたアニメのアイコンだった。
私はそのアニメの名前を友人に聞き、休校中にイッキ見をした。
ずっぷりハマった。
主人公にガチ恋をしたし、最新章のアニメがもうすぐ始まるみたいだった。
そのOPが凄く大好きで、早くCDが出ないかな~と私は休校の日々を生きた。
いつの間にか中学生になっていた。
私は放送委員になろうと決心した。
放送で私の名前を聴いて、もしかしたら次の年に彼が放送委員に入るかもと思ったからだ。
放送委員になり、好きな曲を流す機会があった。
私は最新章がちょうど放送されている大好きなアニメのOPを流した。
彼に私が同じアニメを好きってことを知ってほしいという気持ちもあった。
本当にあれが彼のLINEアカウントで、あのアニメを好きかは分からないけどね。
私は1年生になって少しの間、彼の姿を追っていた。
階段はイオンモールの3階から1階が見えるみたいに、吹き抜けていた。
彼が移動教室の時に姿を見れるのが嬉しかった。
私のクラスの近くには理科室があって、理科室にくる時間をメモしていつも姿を見るようにしていた。
何もできないけど、ただ見ているだけで幸せだった。
何かしてもきっと私のことなんて分からないと思ったし、私自身コミュ障だから自分から話しかけるなんて絶対無理だから。
次の年
また放送委員に私は入った。
そこには彼がいた。
偶然?それとも…なんて考えてた。
席がとても近くて、間近で見れて死ぬほどドキドキしていた。
ドキドキしない方が楽だと思うぐらい止まらなかった。
彼は委員長になった。
私は委員長なら何か話す機会は巡ってくるんじゃないか、今度こそ接点が持てるんじゃないかと思ったけど、やはり自分からは何もできなかった。
そんな中、彼は私を覚えてる素振りも何もない放送委員は二回しか行けず、いつの間にか学校に行けなくなっていた。
それから彼との接点なんて当然切れるわけで、もう会えないと思ってた。
そんな時、駅で母とおにぎりを立ち食いしているという最悪な場面で彼が私を見ている視線に気がつく。
ビックリした、こんなところで会うなんて思ってなかったから。
私は慌てて視線を逸らす。
そして、改札を通った後の彼を見る。
後ろ姿だったか、目があったかそんなことはもう覚えてない。
ただ、また姿を見れたことが嬉しかった。
これが最後に私が彼の姿を見た日のこと。
時が過ぎるのは早く、私ももう高校3年生。
彼は大学生、早いね。
私はたまにネットで彼の名前を検索している。
検索すると彼の通っていた高校の名前、彼の野球のチーム…?みたいところのサイトで顔写真なんて見つけた。
昔から変わってなくてすぐに分かった。
とてもイケメンで私には到底手が届かないくらいキラキラと輝いている。
私はメンヘラだから、彼の名前をインスタで検索してみる。
そしたら、彼と思わしき人物が現れる。
ネットに通っていたと書いてある学校をフォローしていた。
もう確定としか思えなかった。
フォローとフォロワーはとても多く、投稿は0だけど人望の広さを感じる。
私とは正反対だなと感じた。
そのアカウントが、通っているであろう大学もフォローしていたから、大学まで多分分かってしまった…
私はストーカーだと感じつつもアカウントを眺めた。
何回も眺めて、フォローを押してみた。
フォローだけなら迷惑なんて掛からないと思ったからだ。
もし私を覚えていたら何かしら言ってくるだろうと、思いながら。
…まあ何かあるわけもなく日々は流れる。
私が本当にフォローした理由は、いつもなら3日ぐらいで忘れるのに2ヶ月間ずっと、これを書いている今もずっと、忘れられないからだ。
頭にこびりついて離れない。
あの言葉が、目があった時が、全部全部嫌になるほど脳裏にこびりついて離れない。
それが嫌で、私はフォローした。
私はずっと傷つけられたら、拒絶されてから、やっと忘れられるタイプなのだ。
だから、彼が覚えてないって分かったら忘れられると思った。
でも、今もずっと離れないずっとずっと考えてしまう。
今3年付き合ってる彼氏がいても、就活が迫ってても、ずっと考えてしまう。
仕事が始まったら忘れられるかなって最近は思ってる。
ありがとう。私に勿体無いぐらい素敵な言葉を言ってくれて。
それが、私に向けてだったら嬉しいし、当時の私は「君は女神な」って言葉を一生忘れないって誓った。
愛されたいってずっと思ってた私に光を与えてくれてありがとう。
イケメンで、人望も広くて、たくさんの人を笑顔にできて、野球頑張っててそんな素敵な貴方がもっともっと幸せになれますように。
たとえあの言葉が私にかけた言葉じゃなくても、からかいだったとしても私の人生を彩ってくれたのは確かだよ。
本当にありがとう。
私は、早くこの過去の思い出から抜け出して今をまた生きれるようになりたいです。
ごめんなさい、こんなに気持ち悪い文章を書いてしまって。
覚えていて、この文章をあなたが見つけてしまったら私はとても嬉しく、同時に嫌だと感じるでしょう。
最後までありがとうございました。
見てくれる人なんて1人もいないですが私はこれが書けて満足です。