王子、婚約やめるってよ
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王立学園の配給部。
それは奉仕の精神を学ぶための部活で、恵まれない人達にパンを配給したりする慈善事業が主な活動内容だ。
そこには高貴な身分の子息達が入部している。
今、学生は昼休み中。配給部の部室には毎日ここで昼を過ごす4人の男子部員がいた。
丸顔つり目の、セッター
小柄オレンジ髪の、デコイ
そばかす緑髪の、フローター
長身眼鏡の、ブロック
皆、17歳の高等部2年生だ。いつもは学生らしくたわいもない事を駄弁って過ごすのだが……
「王子、婚約やめるってよ」
本日は、セッターが爆弾を投下した。
「えー、うそだろ?!」
デコイは信じられないという顔をする。
「いや…でもナンゴー王子の馬鹿さ加減なら…」
「ない、とは言い切れないですね」
フローターとブロックは顔を見合わせる。
セッターが言うには、つい先程、生徒が集まるカフェテリアにて、婚約者であるシッター伯爵令嬢に婚約破棄を宣言したそうだ。
「なんで? シッターめっちゃいい奴なのに」
「あのボゲェは、真実の愛を見つけた、とかいってたな」
「頭…沸いてるのかな…」
そして、ナンゴー王子の隣には全身ピンクでまるっとしたフォルムの、平民出身の女の子がいたと言う。
「うわぁ…シュミ悪っ!」
「その娘って噂のカビィさんでしょう?色んな男を食事に誘うだけじゃなくて」
「酔いつぶした上でぺろっと喰っちゃう肉食獣」
王立学園は婚活会場の側面もあり、玉の輿にのれる相手探しに貪欲な女生徒も多い。ただ、カビィはその中でもちょっと度が過ぎていた。
周りが「ギラギラ」だとしたら、彼女は「ドッカーン!」って感じだ。
「なんであの娘がやばいこと知らないかなー」
「王子、友達いないからじゃないですか」
「そういえば配給部も入部初日でやめたしな」
「先輩に注意された時…不敬だぞってキレてね」
在学中、生徒達は年功序列はあるものの、学生ということで身分の差はなく過ごす決まりになっている。
しかし、ナンゴーは王子の立場を振りかざし威張るので、現在彼の周りには、金目当ての取り巻き数人しか人がいなかった。
「大方、シッターに毎日注意されるのが煩わしいと感じていたところに、カビィが言い寄った感じだろう」
大当たりだった。ちなみにシッターは、特段性格がキツかったり、口うるさかったりするわけではない。
「可哀想に、シッターが次期王族として自覚をもって責任感を発揮したのが裏目にでましたかね」
「勉強をサボるなとか、学生の身分で威張るなとか、婚約者として当然のことしか言っていないんだろうけどね」
シッターも配給部に在籍しており、彼女の人柄は4人も良く知っていた。
「じゃあ、まあ王子は多分このまま廃嫡になるとして……シッターはどうなるのかな?」
「第一王子や第三王子の婚約者になるかと思ったが、彼らにはもう婚約者がいたよな」
「では、彼女は今……」
「理不尽なことを言われて傷心、かつフリーな状態ということですか」
4人は顔を見合わせる。
真面目で世話焼きな彼女の事を4人は好ましく思っていた。ライクだけでなく、ちょっぴりラブ込みで。
「「「「・・・・・・」」」」
加えて言うと合宿で枕を並べた時には、「将来嫁をもらう時はシッターみたいな奴がいいな」とか、「えーお前もかよー」とかそんな話もしていた。
固い友情で結ばれた4人は今、恋と友情の間で板挟みに……
「ちょっと用事を思いだしたなー!(棒)」
「嘘つけボゲェ!」
「俺に…行かせてください」
「しゃあああ!!」
なっているわけがなかった。
恋愛と友情どっちが大切なの?
友情……?
しんじらんない!!!
あたしは断然恋愛よ。
だって恋愛って脆くて儚いものだから、大切にしないといけないじゃない?
それに比べて男同士の友情は、そう簡単に壊れたりしないわ。
簡単に壊れる友情なんて、友情じゃないもの。
だから彼らは恋愛を大切にしたいと思う。
そんなネバダスタイルの固い信頼?で結ばれた4人は、意中の女性を巡り仁義なき戦いを開始する。
傷を恐れ羽ばたかぬ人生なんて、剥製とかわらないのだ。
バカ王子が落ちぶれていく一方で、シッター伯爵令嬢がたった1人の勝者に溺愛される未来は、きっとそう遠くない。
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