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夢を葬れない僕たち

このバイトをして何年になったろう。

最初の数年は社員試験を受けないかと聞かれていたが、今はその誘いも無くなった。

僕には夢がある。正社員になったら自由に動けなくなってしまうからバイトで…その言葉を最初に言った時とは明らかに自分の温度が変わっているように思う。


私の後に新卒入社した社員が今度本部に栄転するらしい。


夢を叶える為に、後に引かないようにしたい。

保険をかけるようなことはしたくない。

そう言っていたのはいつだったか…今もそう思っている。それは変わらないはずなのに悲壮感のようなものが滲み出ているのが自分でもわかる。


家族ともそもそも仲良かったわけではないが、最近は特にそう。一族の恥晒しだと言っているのを聞いてしまった。笑いながら冗談めかして言っていたが、おそらく本心だろう。


このバイトを始めてどれくらい経つだろう…。


このバイト…、舞台に立つ時に役に立つからとアミューズメント施設で…。

いつか自分の作品をと夢見て書店で…。

少しでも音楽に携わりたくてCDショップで…。

テレアポで…コンビニ深夜で…ホテルの清掃で…。


僕たちは今日もバイトしている。


別に強がっているつもりはない。

ただ、思ったよりもはるかに時間が過ぎて行った。

もう、何年ここにいるのだろう。


ここは夢に区切りがつけられなかった僕らが過ごす場所。夢にとどめを刺せずに延命し続ける。


次のステップにみんなは進んで行ったみたい。

ここは出口直前の踊り場。


耐えられず出口の扉を開けて進んだ友人たちはみんな家庭を持っていたり、昇進している。

僕らはまだもう少しだけと言いながらバイトのシフトを確認している。

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― 新着の感想 ―
夢と言うものは輝かしくも残酷なもので、自分や人に言い訳しながらズルズルと言ってしまう惰性というか、それでもどこかにある憧れを捨て切れないそんな気持ち、とても共感しました。
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