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あの島に住んでいた

作者: 小波

 

 私、一個前の住所石垣島なんですよ〜と言うと隣を歩く人は少し目を大きくて興味を持ってくれた。初めて行く美容室でも世間話でほんの3年前住んでいた場所の話をしていた。やはり好反応である。この美容室は東北の南部、海のない盆地に所在している。話し上手で聞き上手な店長さんに饒舌になったことを今シャワーを浴びながら恥ずかしくなってきた。ちょっとだけ住んだ南の島のことを自慢げに話す姿がなんだかかっこいいとは思えなくて。

ただそれほど魅力的な島だった。あの島へ住民票を置いたのは2回目だった。1度目の時も大変お世話になった島そばの味が忘れられない。(つわりの時食べることの出来た数少ないひとつ。)2度目の時は飛行機を降りてすぐに家族3人で八重山そばを食べた。コーレーグースが懐かしい。島の胡椒の名前が思い出せない。行く先々で名前が微妙に変化するあれ。‥‥


11月立冬本格的に寒い。カウンセリングルームを出た後ふらふらとだけど気持ちは穏やかにとりあえず見つけた図書館でひと休みした。トイレに寄ると鏡の中の頬に涙がついている。そんなことにも気づかないとは他に感じるものが大きかったからか、年取ったか。図書館の一階はフリースペースだろうか。度々美術展が開かれている。市民芸術祭で程よく美術に触れて(良いか悪いかは置いて刺激が少ないのは有り難かった)次はご飯を探す。なんとなく蕎麦屋へ入った。暖かい鳥蕎麦を食べながらひとり外の景色へ目をやる。沖縄のそばはラーメンみたいにどんぶりに入っていてうどんみたいにシンプルな具材が載っていて美味しかったなぁ。日本蕎麦を啜りながらだけど空港へ着くまでの高揚感が今はないと気づく。

あの時まで私は沖縄の味がとてもとても食べたかった。やっと食べれたと思った。今は無いなと今はこの色の蕎麦の汁を啜って体を温める。

私は今ここで冬を越すんだなとちゃんとわかっている。人間関係は豊かで満たされている。


取り憑かれたようにここじゃない!あの島じゃ無いとつらい!というのが取れている。私を苦しめていた季節、寒い季節、そして何か凝り固まったものが残されていたこの土地、雪の景色に凝縮されている苦いもの‥ほんの数ヶ月前まであの島へ戻るのが私だとどんなに細い糸でも泣きそうにたぐっていた。島を出たのは離婚したいと告げた後の別居だった。


美容室で私の髪の毛を沢山切ってくれた背の高い男性は

破天荒ですね!と言っていた。望んでそうなったわけでもない事を重たいところを省いて簡単に説明する。私の生きた道と結婚した夫の性格を足して振り幅が大きくなった4年間がまた破天荒なのだろう‥ものは言いよう‥感じるものが多かった、現在目立った後悔はない。



破天荒

今まで誰もしなかったような事をする、前代未聞

大胆で型破りな様。(スマホ調べ)


短い結婚生活それは4年ほどだったと本日のカウンセラーさんに教えて頂いた。そんなに短いはずない!?と言い直そうとしたけどどうやらそうだった。多分現在も元夫との人間関係が続いているせいだろう。

4年の間には子供が2人生まれ2人は北と南別の土地で生まれた。家族として住んだ土地は3つ。引っ越しは5回だ。


八重山病

沖縄そばを食いたくて食いたくて内地で涎を垂らしていた私、別居期間を経てどうしても泣きたいほどに戻りたかった私、あれのこと。海でも全然いいんだけどと書いていて笑ってしまう。もう一つは夫の側にも戻ってみたいと思う。




 

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― 新着の感想 ―
[一言] 石垣島! 一度旅行で訪れただけですが、いいところでしたね。食べ物もおいしかったし。 以前住んでいたところのものが食べたくなるというのは、遠距離転居経験者のあるあるですね。 自分も、子供の頃…
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