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010 街

 盛大な勘違いをしているようだが、言語を解したコミュニケーションが出来ないから誤解も解きようが無い。

 またイラスト描くか?


「申し訳ありません、今はそんな事に構ってる場合ではないのでした」


 そんな事って言われちゃった。

 俺の存在ってそんな事なのかよ……。


「西の森で瘴気が漂っているというので調査をしていたのですが、案の定ゴブリンが多数棲息していました。私はそれを冒険者ギルドに報告に行かねばまりません。しかし、この足では……」


 へぇ、冒険者ギルドがあるのか。

 この世界って、いかにもなファンタジー異世界だったみたいだな。

 じゃあこの女性も冒険者なのかな?

 まだ解毒が完全に出来てないのか、女性は足がうまく動かないようだ。

 しょうがないなぁ。


「ぶひっ」


 俺が背中を向けて、乗れというジェスチャーっぽい仕草をしてみた。


「乗せていただけるのですか?」

「ぶひ」

「あ、ありがとうございますっ!!」


 俺が首肯すると、女性は輝かんばかりの笑顔でお礼を言って俺の背にまたがった。

 よし、出発進行!

 意気揚々と歩き出すと、


「あの、お豚様。冒険者ギルドは向こうの方角です」


 それを早く言ってよね。

 あと、お豚様ってなんやねん!




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




 背中に女性を乗せて進む事、数十分。

 遠方に街の外壁のようなものが見えて来た。

 そういえばこの世界の街って見るの初めてかも知れん。

 豚舎から出た時は気絶してたから、いつの間にか森の街道だったし。

 ここはそこそこ大きな街のようで、外壁も人の身長の倍程もある立派なものだった。

 入口らしき門の前では長蛇の列が出来ており、何やら入場の審査のようなものをしてるらしい。

 あれ?審査があるって、俺が街に入るの無理じゃね?


「お豚様はお一人で街に入られますとお肉になってしまうので、私の従魔という事にしましょう」


 そもそも入る前に止められると思うけどね。

 俺もお肉になるのは避けたいので、この女性の言う通りにしよう。

 入場待ちの列に並んでる人は、女性が豚にまたがってるという珍しい光景を肴に時間を潰していた。

 俺でもちょっと恥ずかしいのに、この女性は全く表情も変えずに堂々としていた。

 豚に食われそうになって這々の体だった人と同一人物とは思えんな。

 あ、そうか。

 こいつ勘違いして俺の事を凄い豚だと思ってるから、寧ろ誇らしい気持ちで乗ってるのか。

 後で誤解解いちゃったらめっちゃ恥ずいやつじゃね?

 まぁ今はどうする事も出来ないし、足もまだ治ってなさそうだからそのまま行くしかねーんだが……。


「おやカレンじゃないか。なんだその豚?」


 案の定門番らしき人に突っ込まれた。

 この女性の名前はカレンと言うのか。

 名前聞くのすら難しいってのはやっぱ良くないから、早々にコミュニケーション系のスキルをゲットしたいとこだな。


「このお豚……この豚は私の従魔だ。冒険者ギルドに至急報告に向かいたいんだが通ってもいいか?」

「あぁ、お前の従魔ならいいか。門の手続きはこっちでやっとくが、ギルドに行ったらちゃんと従魔登録もするんだぞ」

「分かっている。ではな」


 お豚様って言っちゃいそうになってるし。

 どうやら門番の人とカレンは顔見知りのようで、あっさりと通して貰えた。


 街に入ると、中央に伸びる大きな道は大勢の人で賑わっていた。

 馬車のようなものも走っているし、古き良きナーロッパって感じだ。

 道中、獣人らしき人もちらほら見かけた。

 もし豚の獣人とかいたら、俺の言葉も理解して貰えるんじゃね?

 いや待て、豚の獣人ってオークじゃねーかよ。

 そんなんと通じ合ったら、討伐対象で速攻お肉だったわ。

 くそぅ、コミュニケーションへの道は険しいぜ。

 でも俺は諦めない。

 緑色の肌のオークとは別の、ベージュ肌の豚獣人がいるかも知れないじゃないか。

 キョロキョロと辺りを見回して、言葉が通じそうな人を探す。


「お豚様、冒険者ギルドはあっちです」


 そっか、まずは冒険者ギルドに向かわないとだったな。

 もしカレンと離ればなれになったりしたら人間達に襲われるかも知れないから、その前に従魔登録して貰って、カレンの相棒という事を周知して貰う必要がある。

 俺はカレンの案内に従って冒険者ギルドを目指した。


 街の外壁沿いに暫く進んだところに冒険者ギルドはあった。

 街のもう一方の入口との中間地点にあるらしい。

 周囲は中央通りとは違って小さめな家が建ち並んでいるが、そのど真ん中で冒険者ギルドだけが2階建ての立派な造りになっていた。

 そんな立派な建物を建てれるって、冒険者ギルドって儲かるんかね?

 魔物の素材が高く売れるんだろうか?

 だとしたら、今後は悪食で全部食べちゃわないでちょっとだけ残しておこうかな。

 もっとも俺はその素材を持ち運ぶ術が無いんだが。

 更に言えば、素材持ち運べても俺は豚だから素材売る事すら出来ないし。

 やっぱりお残しは良くないから、今後も全部食べちゃおっと。


 冒険者ギルドに入ると、中にいた冒険者らしき人々が一斉にこちらに視線を寄越した。

 まぁ豚にまたがった女性が入って来たら普通に見るよね。

 それらの視線を無視して俺は受付らしき場所へと向かった。

 幸い今は混雑している時間ではないようで、並ぶ必要も無く受付に辿り着けた。


「あれ、カレンさん。なんですかその豚?」


 受付にいた可愛らしいおさげの女性がカレンに問う。

 それに対し、カレンは真剣な口調で告げた。


「すぐにギルマスを呼んでくれ。西の森の調査の件で報告だ。この豚にも関係している事で、どうしても直接ギルマスと話しがしたい」

「わ、分かりました」


 え?俺ゴブリンとは関係無いよね?

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