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第231話 Happy New Year(3)



 列を外れてからスマホの時刻を確認すれば、年明けまで残り十五分を切っていた。


「ぎりぎり間に合いそうかな。湊斗たちあっちのほうだって」


 年明けが近づくにつれ、どんどん人が多くなってきているが、参道を外れると、列の辺りよりはいくぶんか人は捌けていて歩きやすい。


 ただ着物は裾も長くて転びやすいだろうから、急がせないように碧も歩調を遅くして、くるみに足並みをあわせる。


「さっきの参拝……碧くんは何を祈ったの?」


「えーっと」


 くるみの祈りは訊こうとしてたくせに、逆に訊かれると、自分のことを話すのは妙に気恥ずかしく躊躇する。


「内緒じゃだめ?」


「ふふ……話したくないならいいの。おねがい事を叶える秘訣はむやみに人に話さないことだっていうものね。根拠はないけれど」


「けど言葉には力があるからどんどん口に出してけってのもあるよね。くるみは?」


「あ、言わせようとしてる? けど残念。私も内緒にしちゃおうかな」


「なんだ。結局はふたりとも秘密ってことか。……まあ僕はくるみがこのさき一生、ずっと一緒にいてくれるなら、それが一番なんだけど」


 尻すぼみにぼそっと呟くと、聞き逃したらしいくるみが追い縋ってくる。


「え。今なんて言ったの?」


「な……何でもないよ」


「余計に気になるでしょうもう」


 今のを二度言うのはさすがに恥ずかしく、聞かれなかったのをいいことに、ははっと笑って曖昧にぼかす。


 どれだけ尋ねられても同じことは答えるつもりはなく、話はここまでとなった。


 なお、実のところ、くるみは碧とほとんど全く同じと言っていいおねがい事——合格成就や相思相愛の存続……そして碧の望む世界平和が叶うこと——を熱心に捧げていたのだが、碧が知る由もなく、神のみぞ知るままふたりの心に秘められることとなった。


 そうしてぴったり寄りそいながら、人目につきづらい長殿の外れのほうに行くと、年越しの約五分前にしてようやく湊斗、つばめ、和佐の三人と落ちあうことが出来た。


「お待たせみんな」


 声をかけると全員が振り返った。


「おお〜!」


 まず第一声は、くるみの振袖に対する感嘆だろう。


「これで全員揃ったかんじか」


「くるみーん今年もう会えないかと思った!」


「ごめんなさい。私が改札間違えちゃったせいで」


「くるみん普段あんまり電車乗らないもんね。碧が連れてきてくれてよかったぁ」


 つばめもモデルなのもあり、もしかしたら——と思っていたが、着物ではなくモノトーンのコートという大人っぽいルックスの私服。ベージュの縁の伊達眼鏡は、彼女がモデルゆえに念のための正体ばれ対策だろう。


 そんな彼女がふふんと裏がありそうな様子で笑み、くるみにこそっと耳打ちする。


「……で。旦那様の反応はどうだった? きっちり可愛いって言ってもらえた?」


「だ、だだだっ旦那様って!! まだそんなんじゃ」


「今まだって言った! そっかとうとう婚約まで……♡」


「ちっ違……!」


 会話はぜんぜん聞こえなかったのだが、一気に茹だったくるみが取り乱して狼狽するので、碧は二人がどんな会話をしているのかあらかた察してしまった


 とりあえずお高い振袖のくるみはべたべたされても困るので、肩を抱き寄せてつばめからさらっと引き離しておく。


 いちゃつくのが目的じゃないのにそれだけで白磁の肌が余計に赤くなるもんだから、彼女の照れやさんにも苦笑してしまう。ついでにまわりからも嫉妬や羨望じみた視線を貰うので、碧としては針の筵だが。


 一連の様子を見ていた湊斗もご機嫌なかんじで、片手を上げた。


「さっきぶり。ちゃんと参拝してきたか? もうそろそろ年明けるぞ」


「ここまで思ったより混んでてさ。マスター……じゃなくて和佐さんも今年はお世話になりました」


「ああいいよいいよ。堅苦しいのはなしなし梨の木で。そんで、この子が秋くんの彼女さんであってる?」


 碧の腕にすっぽり包まれていたくるみは、猫をかぶる——と言うと聞こえが悪いが、ぱっと居住まいを正すとぺこりとお辞儀し、着物映えのする神々しい笑みをおっとりと浮かべる。


「初めまして。碧くんとおつき合いしているくるみと申します。彼がいつもお世話になっています」


 和佐は眩しさに仰け反り、押され気味。


「おお……なんというか聞いてた以上というか。ちょ……ちょっと秋くんこっち」


 ちょっぴり離れてから手招きされるので、とりあえず素直に言うとおりに。


 こっそり、しかし切羽詰まった様子で、碧にだけ聞こえるように和佐は小さくわめく。


「いやすげー可愛いじゃんあの子。秋くんぜんぜん隅におけないのなんのって」


「僕があんまり彼女の写真見せたくなかった理由、分かっていただけたようで何より」


「どころか、卒業して速攻で一緒に暮らしたくなるわけも分かっちゃったよ。あーいいねー若さってやつはさぁー」


 と、なぜか和佐が勝手に上機嫌になったところで、内緒話は解散。


 彼はげほんと咳払いをして、くるみに向き直る。


「どうも。湊斗の父でオーナーをやっている者です。秋くんね、お金を稼ぐためにずいぶんがんばってるんだよー。それと惚気話もたくさん」


「え? はあ。のろけですか」


 バイトの最中にどんな会話があったか知らないくるみは、よく分かっていない様子だ。


 碧は釘を刺すように目を眇める。


「あの、和佐さん。あんま余計なこと言わないでくださいよ」


 もちろん仕事を覚える段階で何度か失敗もしているし、先輩の紬にくるみのことをあれこれ聞き出されたせいで、碧が恋人にどうしようもなくメロメロだということは、従業員の間では——とは言っても四人きりだが、周知の事実。


 もちろんくるみが遊びにくるのは構わない、むしろ嬉しいのだが、わりと聞かれたくないことが積み重なっている。このまま策を講じずに招待すると、こちらがいろいろとダメージを受けかねない。


「いいじゃないの。秋くんの彼女ちゃん、今度ぜひ秋くんが働いてるときに遊びに来てみなよ。お客さんには〈アドラブル・カフェのイケメン〉って可愛がられてるの見れるから」


「マスター!!」


 それ、喜寿を迎えたくらいのおばあさんのお客さんが言ってたやつなんですけど。


 ——久々に会った孫を可愛がるのりで言ったやつなんですけど!!


 これにはさすがのくるみも黙っていないようで。


「はい。ぜひおじゃまさせてください!」


「くるみも乗らなくていいから」


 なぜか好奇心を発揮している様子の彼女に、思わずつっこみをいれた。


 一堂がわっと笑う。


 隙を見たつばめが皆を現実に引き戻す。


「時計見てーもう残り三分切ってる! 改めてみんなで年末の挨拶しとくよ!」


「つばめちゃん。今年はお世話になりました」


「えへへーこちらこそくるみーん♡」


 仲睦まじく戯れあう二人のかたわら、男同士の挨拶をする。


「碧。進路は違くなりそうだけど来年だけとは言わず、今後もよろしくな」


「おう。勿論」


 湊斗の差し出した拳に自分もぐーを突きあわせる。


 碧と彼とで同時に女の子二人を見ると、空気を読んだつばめはのりよく近寄って拳をくっつけ、それを見たくるみも、おずおずと控えめながらもタッチに参加してきた。


 ほのぼの……とした空気のなか、くるみが碧に、ぺこりと腰を折る。


「碧くん。今年もお世話になりました。来年もどうぞよろしくおねがいします」


「うん。こちらこそ一年間くるみがいたおかげで本当に、すごくいい年になれた。今後ともどうぞよろしくおねがいします」


「今年の終わりも来年の始まりも、どっちも碧くんだなんて。なんだかすごく不思議」


「そうだね。……次回から少しずつその不思議を、当たり前にしていきたいね」


「……うん!」


 慌ただしくもきっちり年末の挨拶をしているとその時、神宮の空気がわっと震えた。


 ——十! 九!


 とうとう年越し十秒前のカウントダウンが始まったらしい。


 参拝客が一つになって唱和するので大地を揺るがすほどに重厚だ。参道を埋める人々が本殿の方角へ高々とスマホを掲げていて、仲間たちも彼らに釣られてそっちを見る。今なら誰もこちらを気にしていない。


 ——八! 七!


 と、その数字に合わせて碧は、すぐ隣にいるくるみをひょいっと横抱きにした。


「きゃっ」


 か細い声も他の人には届かない。友人達はカウントダウンに気を取られている。


 確かに振袖のぶんだけ、いつもの彼女よりもずしりと重みがある——と考えるひまなんかない。もう数秒で年を越すのだ。


 ——六! 五! 四!


 目の前には、驚きに氷の彫像になったくるみ。


 今年最後のいたずらのつもりで、耳許でささやいてやる。


「男子の一言金鉄の如し。なんでしょ?」


「っ! ……ばかっ」


 息が掛かったのかびくりと震える。着物に描かれた花と同じくらい頬を染めたくるみは、頬から耳までをさっと染めながら、今年最後の手ぬるい罵倒を絞り出した。


 —— 三!


 全員の声が重なる。


 —— 二!


 時間は待ってくれないとばかりにカウントダウンが、残りを刻んでいく。


 —— 一!


 次の年にかける皆の期待が一つになり、熱を帯びて寒空に逃げる。



「「「明けましておめでとうー!!」」」



 時報とともに、新しい年を迎えたことが放送で告げられた。


 謹厳たる神社からは想像のつかない歓びが、参詣客のあいだでわっと渦巻く。


 バッグのなかのスマホが挨拶のLINEを受信したのか、立て続けに震えた。


「あけおめー!」


「明けましておめでとー!」


「おう。おめでとう」


「碧とくるみんも明けおめ! ……ってどうしたのその空気? なんかあった?」


 年を跨いだ直後に降ろされていたくるみは、はたから見たらいつもどおりのはず。


 だが知ってのとおり、と言っても知ってるのは碧だけだが、くるみは想定外が一番の弱点だ。不意打ちが功をなしたか、余裕綽々はすっかり鳴りを潜めて、ぷるぷる茹だりつつ借りてきた猫のように大人しい。


 湯気を出しながら、ぼそっと小さく「明けましておめでとうございます」と返事するので、つばめはますます不思議そうだった。


 煽ってきたのはそっちのくせに、と笑いながら赤らんだ彼女にささやく。


「約束はちゃんと守ったよ」


「……! ずるい。碧きゅっ」


 あ、かんだ。


「…………碧くんばっかりそうやって私をドキドキさせてくるっ」


 かんだことをごまかしたいのか、自棄のようにくるみはこっちを抱えようと脇腹に手をそえるが、勿論びくともしない。


 垂らした横髪が肩のあたりで引っかかっているので、体に沿うようにながしてやる。


「くるみのおねだりなんだけどな」


「言ったけど! 冗談だっても言ったもの。……お返しに、碧くんに抱かれながら新年迎えたって学校のみんなに言いふらしちゃうから」


「それ多分違う想像されるからぜったいやめといてね?」


 知ってか知らずか——多分知らないだろうが、扱いにかなり困る捨て台詞を残し、くるみはすたこらさっさと親友のほうに逃げていく。


 そのまま抱きつかれるのを、事情が分からないながら受けいれたつばめ。


 恥ずかし半分にすっかり拗ねた風に後ろからこちらをうかがう彼女を、よしよしと宥めながら不思議そうに笑っていた。


 それを微笑ましく眺めてから、さて、と碧が訊ねる。


「それでつばめさん。今日は参拝だけって聞いてたけど。この後はどうするんですか?」


「まあまあそんな堅いこと言わないで。折角だし早速おみくじでも引に行こうよ! それが初詣の醍醐味ってもんでしょ」


 それには湊斗が乗っかる。


「じゃあ一番早く大吉出した人が勝ちな」


 くるみが控えめに笑う。


「おみくじって何度も引くものでもないんだけれど……つばめちゃんは確か、去年は二連続で凶だったって言ってたような」


「どうしよう! この運のなさで勝てる気がしないよ!」


 碧がスマホで調べて報告する。


「君たち盛り上がってるところ悪いけど、ここのおみくじに吉凶はないらしいよ」


「えーっそうなの? じゃあどうやって結果知るの?」


「和歌とその解説らしい。まあ一喜一憂せずに済むってことでよかったじゃないですか」


「むむ。じゃあ三連続目の凶はいみじくも逃れられたってことか……」


 そんなこんなで、一同笑いさざめきながら歩き始めた。


 広がって歩くと迷惑なので、一番前は大人として代表する和佐が先導。次に湊斗とつばめ、その後ろを碧とくるみがそれぞれ恋人同士、手をつないで連なる。


「そういや……ふたりがつき合い始めて揃うところを見るのは、学校以外じゃ今日が初めてだったかも」


 一歩前を行く湊斗とつばめは、三百六十度どこから見たってラブラブな空気を全開で手を絡ませ、ご来光も負けるほどきらっきらの表情でお喋りをしていた。


 ——〈幼なじみだから、前進できない〉

 ——〈友達の期間が長すぎた〉


 その言説を見事にくつがえして幸せを手にしたふたりには、心からの祝福と拍手喝采を送りたいところ。


 隣のくるみも嬉しそうにしみじみ頷く。


「二人とも、本当に幸せそう。両想いが伝わったみたいでよかった」


「湊斗に至っては仕事中もでれでれして、締まりがまるでないけどね」


 待たせている間、和佐はさぞ肩身が狭かっただろうな……とひっそり同情しておく。


 こちらの会話が聞こえたのか、つばめが物申したげに振り返った。


「いやいや。碧たちのほうがすごいからね? 四六時中いちゃついてるじゃん?」


「えー。どこ見て言ってるんですか。ぜんぜんいちゃついてませんよ」


「空気がいちゃついてる」


「なんだそれ」


「だってくるみんから報告あったけど、今度の春休みはお父さんお母さん公認で、一緒にドイツに里帰りするんでしょ?」


 早速話したのか、と隣を見れば、くるみが申し訳なさそうに曖昧な笑みを浮かべた。


 別にこの話自体はいいのだが、他のことも筒抜けならそれはちょっと困る。


 つばめがロマンチックなものを見た時のようにうっとりする。


「碧は自覚してなさそうだけど、もはや新婚さんのヨーロッパ旅行か、夫の実家に着いていく妻のどっちかだよそれ! あーいいなあ……羨ましい限りで」


「確かに……おふたりさんってなんていうか。高校生でその境地に至ったらもう、国で保護すべき記念物だよなあ」


 湊斗までほんわか笑いながら、こちらの交際事情に関して妙なことを言い出す。あまりやぶを突かれては、くるみの羞恥が爆発するではないか。


 前を見ろ、と手で追っ払う。


 賑やかすぎるのも困りものだな、と同情を求めるように隣を見ると——


「あ。碧くん待って。止まって」


「え?」


「靴紐がほら。解けてる」


 着物の裾を抑えてさっとしゃがむと、こちらのスニーカーに手を伸ばして蝶々結びにしてくれた。それで終わりかと思いきや立ち上がり次第、華奢な手は順々に上へと伸びてくる。


「髪、ぼさっとしてる。新年なんだからきちんとしないと。マフラーもぐるぐる巻きじゃなくてもっとお洒落で格好いい結びかたがあって——」


 今年初観測のお小言を呟きながら、慣れない厚底で踵を上げながらぐぐっと近寄り、こちらの身嗜みを直してくる。高さのあるフォーマルな草履だが、それでも身長差があるため碧も屈んでやった。


 だらしない人間でいたくはないが、くるみに世話を焼かれるのは好きだ。


 愛されているというサインに、和むというか、幸福になるというか。


 こうやって心を許して甘え切れる相手がいる事実そのものがこそばゆく、こちらにふれる手の動きが心地よく、春の陽だまりのように、心をあたたかくしてくる。


「尽くすの好きだよね。ほんと」


「あなた限定で……だけどね」


「ちょっと可愛すぎるから抱き締めていいですか」


「だーめ。ほら、直せたからみんなのところに——」


 そんな愛おしい彼女が離れていく様を眺めていると、くるみの言葉がふいに途切れた。


 目に映るのはきょとんとした少女だ。


「どうしたの、碧くん?」


「え?」


「にやにやしてたから。私にお世話されてそんなに嬉しいの?」


「嘘だ。してないと思うけどな」


 やや不名誉な表現を撤回させたく、自分の頬をぺたぺたさわる。


 何もおかしなことはない。


「いつもどおりだよ」


「それでもやっぱりすごく幸せそう。……あっもしかして」


 まるで、何か重大な世界の秘密にたったひとりだけ気づいたような風情で、くるみはぽんと手を打った。それからくすくすと、銀の鈴を転がしたかのような、甘く涼やかな笑い声を上げる。


「なんで笑ってるんだよ」


「肩透かしというか……そんなに意気ごまなくてもよかったなって。わたし駆け引きは苦手なほうだったし」


「どういうことで?」


「碧くんがそんなに幸福そうな理由。いっぱい甘やかしてあげるだけで、あなたにとっては幸せなことだったってことに気づいたの。……うん。それなら私、すごく大得意」


 とんでもない世紀の大発見をしたらしいくるみは踵をもう一度あげ、目一杯に腕を伸ばしてこちらの両頬を優しく包みこんだ。


 包みこんで、親指がつつうとくちびるをなぞって、それから甘く甘く揺れるヘーゼルの瞳で見つめ続けて——ボリュームを相当に絞って悪戯っぽくささやく。


「じゃあ今のが私なりのお返し。明けましておめでとう碧くん。これからもいっぱい甘やかして、離れられないようにして差し上げるから……かわらず一緒にいてね?」


「…………うん。おめでとう」


 おみくじの予言でも助言でもないのに、自分は彼女の一言一句に振り回されて、意表を突かれて、それしか返せない。


 あいかわらずこちらを見上げ続けるくるみを直視し続けることは、歓喜と狼狽による感情の高鳴りが阻んで、もう困難だった。


 ——僕の彼女いちいち可愛い。


 ただでさえ見た目も中身も仕草も、ぜんぶが愛らしくて好きで仕方がないというのに、こんな発言までして、一体碧をどこまで弄ぼうというのか。


 惚れた弱みと言えばそれまでだが、こういう些細な事だけでもう、今年も彼女は一枚上手なんだろうなと分かってしまう。だけど一枚上手になられてもいいかと思える謎の説得力が、さっきの発言にはある気がした。


「あーふたりの世界はいってる!」


「いちゃついてないで早く来ないとまたはぐれるぞー」


 少し遠くから、友人達がぶんぶん手を振っている。


 今行くよ、と少し大きく返事して、最後にこの名状し難いほどの熱の高まりを表現すべく、くるみにだけ伝わればいい言葉でつぶやいた。


Ich()auch()……Ich() möchte(緒に) bei() dir() sein(い )


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