完全無料の暖房器具
それから平和的な時間が続き、勉強の休憩がてらお風呂にしようということになる。
ボタンを押し、お風呂が沸くまでの間の時間。
「若菜が先に入って」
「え、いいの?」
「それとも、一緒に入る?」
いつもならこんなこと言わないし、言えば紗里が恥ずかしさで気温を上げてしまうのだが、さっきまでの空気を完全に払拭するために頑張る。
「えー……」
「あっ、悩むのね……」
「だってこの前一緒に入ったし……」
まさか悩まれるとは思わない。入らないよ〜、と笑って言われるかと思っていた。
「あの時はあの時だからであって、今のはじょっ、冗談よ?」
「そうなんだあ」
なぜかちょっと残念そうな若菜である。
「当然でしょう? そこまで広くない浴室なのだから」
「涼香と涼音ちゃん」
「あの子達は例外中の例外よ」
真剣な顔をする若菜に真剣に返す。
すると途端に若菜が吹き出す。それを見た紗里もフッと力を抜く。
「冗談だよ、よかった。うん、紗里ちゃんも私も元気が出た」
「ありがとう、気を使わせて」
先程までの空気はもう無い。いつも通りの、紗里と若菜の空気だ。そう、いつも通りに戻ったということだ。
(私はなにを言ったの??????????????? なんか、若菜に一緒に入る? って言ったわよね? 馬鹿じゃないの? 無理に決まっているでしょ? 恥ずかしい恥ずかしい! ああもうっ! ああああ‼)
「もう沸いたみたい。お先にどうぞ」
なんとなく、部屋が暖かくなった気がするのだった。




