今生の別れ感
紗里とて、若菜を困らせている自覚はある。それを抜きにしても、今ここで泣き続けてもなにも変わらないしなにもできない。
「うぅ……ごめんなさい……」
涙を拭いて、力無く微笑む。
なんかもう、今生の別れ感が凄かった。
「えっと……大丈夫だよ? 別にいなくなったりしないから」
「えっ、いいの……?」
「ごめん雰囲気で進むのやめてほしい」
「ごめんなさい」
「なんか飲もう! 温かい物!」
とりあえず、この雰囲気をどうにかしたい。自分の家ならホットミルクとかを出したのだが、人の家ということでなにもできない。泣いている紗里にどうにかしてもらわなければならない。
「うん。用意するわ」
よろよろと、おぼつかない足どりの紗里が心配になり、若菜は申し訳ないと思いながらも後ろからそっと支える。
「ひゃあ⁉」
若菜の手が、紗里の肩に触れた瞬間に身をこわばらせる。そして目の端を赤くした紗里の潤んだ目が、若菜に向けられる。
「えっ可愛い……!」
思わず出てしまった言葉。まさかの紗里の姿に若菜は自分の頬が熱くなるのを感じる。
「はなして……」
「あっごめっ――」
カサカサと、紗里が目にも止まらぬ速さでマグカップにティーバッグを入れ、ポットからお湯を注ぐ。
「ルイボスティーはカフェインも入ってなくて、リラックス効果があるの。でも、勉強するのだからカフェインの入っている物にすればよかったわね」
早口で紗里が言う。
「そっ、そうなんだ、さすが紗里ちゃん」
なぜかそんなことを言ったのか。察した若菜はそれに乗るのだった。




