肉は焼いている最中が一番美味しそう
一人勉強をしている若菜。背後から、肉の焼けるいい匂いが漂ってくる。
(なんでお肉って、焼いている最中が一番美味しそうなんだろう)
勉強する手を止めながら、肉の焼ける匂いに腹を空かせる。
そしてすぐ我に返り、思考を切り替える。
(危ない危ない……これは集中力を保つ練習。さすが紗里ちゃんだなあ)
また集中力が途切れ、その都度頭を振る。
せっかく紗里がこうして家に泊めてくれてまで、勉強を見てくれているのだ。時間を無駄にはできない。
今まで教えてもらったことを意識しながら、丁寧に数学の問題を解いていく。
かなり基礎を固めてくれたおかげもあって、応用問題も解けるようになっている。あとは、それをどれだけ早く、なおかつ間違えないように解けるかだ。
(うん……解るようになれば勉強って楽しいな)
徐々に勉強の楽しさに目覚めていく若菜。これはいい波に乗っているぞと、問題を解く速度が自然と上がっていく。このままどこまでも行けそうだが、とりあえず決められた範囲までに留めておく。
そして残った時間で見直しをする。ここでいくつか間違いを見つけ、それを訂正していると時間がやってきた。
「どう? 終わった?」
「うん! 結構余裕だったね。見直しできる時間もあったし」
「進歩ね、この調子よ」
微笑みかけてくれる紗里に、若菜も笑みを返すのだった。




