まるで同棲!
(昼間とは違って、夕方はどこか物悲しいわ。だって、本当なら別れる時間だから。でもね、でもね、今日は違うのよ。若菜と一緒なのよ。一緒に帰られるのよ! 夢でも見ているのかな? 違うわね、痛いわ。隣を歩く若菜、いつもと雰囲気が違うわ。直視できない!)
「なんか変な感じだよね、こうやって紗里ちゃんと買い物行くの」
「そうね」
「なんか楽しい!」
(私も楽しいわ! 楽しすぎるのよ‼ だって人とお買い物、それに夕食の食材を買いに行くなんて家族と以外そうそう無いし、それも相手が若菜なのよ! 同棲? 同棲なの?)
「私も楽しいわ」
(若菜は友達の家にお泊まりはしたことありそうだけれど、多分その時はご飯は家の方が用意してくれたのね。そうよ、きっとそうよ。だって若菜の交友関係内で一人暮らししている子はいる? 私しかいないわ! 調査済みよ! ああああああああ‼ ごめんなさい、気持ち悪いことをしてしまったわ!)
「今日のご飯はなににするの?」
「ピザ――じゃなくて、リクエストはある?」
「ピザ‼」
「え? あ、そうね。生地から作ってもいいけれど、時間がかかるから、生地だけは売っている物を使えば。ただ、あまり売っていないと思うのだけれど」
「うーん、確かに。ナンはよく見るんだけどね」
「業務用のスーパーとかに行けば売っている可能性はあるわ」
「でも近くに無いしね。じゃあ……」
(でも若菜がどうしてもと言うのなら、買ってくるわよ。私がその気になれば一瞬で買えるだろうし。ああでも、それだと若菜と一緒にお買い物できないわ)
「それなら、売っている物を見ながら一緒に考えよっか」
「うん! それ楽しそう!」
(食材を見ながら、あれ食べたいこれ食べたい。二人で相談しながらのお買い物。これは同棲⁉ まるで同棲!)




