まるで同棲
「なに食べるの? まさか紗里ちゃんの手作りご飯⁉」
(待って、もしかしなくてもこれは若菜が私の手料理を期待してくれているということよね? だって目がキラキラしているし、えっ、ちょっと、そんな予定なかったのだけれど、これは作るしかないわよね。そうよ、仕方が無いのよ、だってここで違うと言って、若菜のモチベーションが下がってしまうと勉強の効率が落ちるわ。そうよ、これは勉強のため、勉強のためよ)
「そうよ。ただ、材料が少ないから、明日の分も合わせて買いに行かないといけないの」
もしこのタイムロスで若菜が特待生になれなければ腹を切ろう。
物騒な覚悟を決め、紗里はさも初めからそうする予定だったかのように振舞う。
「ごめんなさいね、わざわざ家まで来てくれたのにすぐ出ることになって」
買いに行くと決めていれば、スーパーで待ち合わせにしたのに。でも、こうして家から行くメリットもある。最も、それをメリットだと思っているのは紗里だけど。
(私の家から一緒にスーパーに行く……同棲じゃないの‼)
「別に大丈夫だよ。部活引退してから運動あまりできてないし」
「身体を動かすのは勉強する上でもメリットがあるのよ」
「そうなの?」
「忘れたわ。さっ、早く行こっか」
あまりのテンションの高まり具合に適当なことを笑顔で言う紗里であった。




