表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

916/928

全てを込めたお義父さん

『おっけーだったよ』


 若菜(わかな)からそう返信が来たのは、掃除が終わって瞑想をしている最中だった。


(良かった、ここまでして来られなかったら数日は横になっていたわ)


『気をつけてね』


 そう返信をして、紗里(さり)はまた目を閉じる。


(若菜が泊まりに来るということは、これはお泊まり会……、お泊まり会、なんて響きなの? これでは持たないわ。違う、目的を思い出すのよ! これは合宿、勉強合宿よ! だから別におかしなことではないし、若菜の受験のための合宿、勉強よ。勉強漬けよ!)


 紗里と若菜の二人だけで、合宿と言えるのかどうか分からないが、そう考えなければ緊張でおかしくなりそうだ。


「瞑想は駄目! 緊張してきた!」


 無心になれないし、なんなら考えすぎておかしくなりそうで、とりあえず声を出してみるがそれはそれで恥ずかしい。


 紗里はモゾモゾと、カーペットの上でのたうち回る。考えないようにしているが、どうしても意識は若菜に向いてしまい、僅かに響く足音が若菜のものだと判ると、身だしなみを整え、なにごとも無かったかのように振る舞う。


 程なくしてインターホンが鳴らされ、紗里が鍵を開けて若菜を迎える。


「おかえりなさい」

「おじゃましまーす。はい、紗里ちゃん。お世話になります」


 全身全霊で全ての勇気を振り絞り発した「おかえりなさい」はスルーされ、若菜から最初は持っていなかった紙袋を渡される。


「別に気を使わなくてもいいのに」


 とりあえずそう言いながら受け取り、平静を装う。


 中は洋菓子店の焼き菓子の詰め合わせだった。


「お父さんが急いで買いに行ってねー、紗里ちゃんに教えてもらうんだからちゃんとしろって」

「そう、お義父さんが」


(お父さんとお義父さんって、意味と字は違うのに音は同じで良かったわ)


「ありがとう。なら、期待に応えてみっちり勉強しましょうか」

「うん! 頑張る!」


 改めて、しっかりと教えなければならないと気を引きしめる。


「でもその前に、夕食を買いましょう」


 そのために、まずは腹を満たす必要がある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ