合宿前の準備
(こうしてはいられないわ、若菜が帰ってくるまでに掃除しないと。――若菜が帰ってくる……? まるで同棲……⁉)
紗里の家でのプチ勉強合宿のため、若菜は一度家に荷物を取りに行っている。急遽決まったが別に紗里の方は問題では無い。若菜のご両親はなんと言うかだ。
一応、若菜の勉強を見ると決まった時に挨拶には伺ったが、もし駄目だと言われたらどうしようか。
(若菜のお父様もお母様も、駄目だと言うタイプではないだろうけど……大丈夫なの? 人の家でお泊まりなんて。私の命も危ないけれど、本当にいいの?)
掃除機をかけ、床を拭きながら頭も動かす。
(髪の毛一本でも残せないわ)
二人で寝るなど想定されていないベッドは若菜に譲ろうと、シュッシュしてコロコロする。
こんなことなら布団を干せばよかったと。なんなら今からでも干してしまえと、夕方だがベランダに布団を干す。
(どうしようどうしよう、あああああ‼ ご飯よ! 材料が無ければ買いに行かないと。若菜と一緒に食材を買いに行きたいけれど、あくまで勉強のため私の家に泊まるのよ、無駄な時間は使えないわ。あと若菜に、ここに住みたいと言わせたい!)
一人騒がしく残っている食材を確認する。
(大根、にんじん、玉ねぎ、じゃがいも……葉物が無いわ、お肉も無い。………………考えるのよ、こんな日は、ピザとかお寿司とか、なんかパーティー感のある物を買った方がいいかしら? だって若菜が泊まってくれるのよ? お祝いよ。いえ、でもそれだと普段の食事が分からない。若菜に住んでもらえる判断材料が減ってしまう。くっ……どうすればいいのよ! ああああ! 作るということは、若菜に手料理を振る舞えるということ⁉)
半ばパニック状態の紗里はその場でグルグル回りながら、とりあえず寝室の本棚で本を出したり戻したりする。
(シャンプーもボディソープも本当に私ので大丈夫なの? 嫌じゃない? 考えることが多いわ。ああもうどうしよう、どうしたらいいのよ……)
若菜が戻ってくるまで、まだ時間的に余裕はある。とりあえず食材を買いに行こうと――。
(若菜が帰るとすれば明日の夕方? もしかして夕食を食べて帰る? 明後日は学校だから遅くまではいられないというのを考えても……昼食は食べていくでしょ? 買い出しは休憩がてら二人で行けば……、それよ‼ それよ私‼ ということは、今日はピザを頼みましょうか! そうと決まれば若菜に連絡――はいいわ、掃除よ‼)




