秋の勉強会にて 涼香と涼音 5
「はいお待たせ」
「わあケーキだあ」
デンっとテーブルに置かれたのは、重ねたホットケーキの周りに、ホイップクリームを塗ってケーキみたいにした物だ。
「ちょっとお母さん、スマホを返しなさい」
「はい、ありがとう」
「もう……」
「宮木の子と若菜ちゃんが困っていたみたいでね」
「まあなんでもいいわ。食べようではないの」
「てかなんで重ねたの? どうせ切るのに」
ホットケーキを重ねているから、高さもそこまで無いし、どうせ切るんだしで重ねなくてもいいのでは? という涼音の疑問に、涼香の母が胸を張って返す。
「見た目がいいじゃない」
「えぇ……」
「あと間にフルーツを挟んでいるわ」
「最初のいらなかったよね⁉」
涼香の母がホットケーキを三等分に切ると、その間にはフルーツの姿があった。
「シャインマスカットよ」
「輝いて見えるわね」
「おー」
シャインマスカットのみだが、シャインマスカットのみに集中できると考えればこれも良い。
「涼音、あーん」
「えっ、先輩の分もくれるんですか」
そう言って、涼音は涼香の前にある皿も取る。
これで涼音の前に皿は二つ。涼香の前にはなにも無い。
恐ろしいものを見たような表情を涼音に向ける涼香であった。




