秋の勉強会にて 若菜と紗里 4
ただ無言で見つめ合うという謎の時間が続き、耐えきれなくなった紗里が先に動いた。
「休憩にしましょう、おやつを用意したのよ」
「やったー」
若菜が来る直前に作ったフルーツサンド。冷蔵庫に入ったそれを取り出せばいいのだが、なぜか紗里は冷蔵庫ではなく皿に置いていたパンの耳を持った。
「はい、フルーツサンド」
「…………紗里ちゃん?」
若菜の声を聞いて、もしかするとフルーツサンドは苦手だったかと、冷たい汗が出てきてしまった紗里は自身のミスに気がついた。
「あっ⁉ ごめんなさい、違うのよ、おかしいわね。ちゃんと用意しているのよ?」
慌てて戻り、冷蔵庫からフルーツサンドを取り出す紗里。
「ほら! ね? フルーツサンドでしょ? えと、食べられる? 苦手じゃない? シャインマスカットなのだけれど……」
「紗里ちゃん、疲れてるの?」
「ち――がうと言いたいのだけれど、多分無意識のうちに疲れていると思う……」
「今日はもう、休む? 私は自分でなんとかするし……」
「大丈夫よ、大丈夫。大丈夫だから」
「そのセリフが大丈夫じゃなさそうなんだけど。やっぱ私の成績だと厳しい……?」
「合格は絶対に大丈夫。でも、特待生となると、このペースで頑張らなくてはならないのよ」
「でも……」
「言いたいことは解るわよ。私が疲れていたら、教える効率が下がるんじゃないのか不安なのよね」
「それもあるけど……、紗里ちゃんになにかあったら嫌だなって」
「……………………なんて良い子なの」




