秋の勉強会にて 菜々美とここね
菜々美とここねの休日は、基本的には勉強をしている。場所はいつもここねの家、今日も菜々美はここねの家にお邪魔していた。
二人で向かい合っての勉強。教室の机よりも少し広いローテーブルは、二人分のテキストを置いてもまだ少し余裕がある。
「少し寒くなってきたね」
「そうね、冷えないようにしないと」
これからやってくる本格的な寒さを思い、少し重たい息を吐く菜々美。
「暑かったら早く涼しくなってほしいし、寒かったら早く暑くなってほしいよね」
「このくらいの気温がちょうど良いわよね」
穏やかな会話をしながら問題を解く。退屈で集中力を要する作業でも、二人でなら楽しい。
このゆっくりと進む時間が、二人にとって大切なものだ。
「菜々美ちゃん、そろそろ休憩する?」
「もうそんな時間?」
「うん、二時間も勉強していたよ」
今まで全く気にならなかったが、経過時間を聞けば身体は疲れを訴えてくる。
「そうね、休憩しましょう。お菓子持ってきたわよ」
菜々美はトートバッグから個包装のバームクーヘンを取り出す。
「じゃあわたしは紅茶入れてくるね!」
食べる物を菜々美が用意、飲み物はここねが用意してくれる。
しばらくの間、ここねの部屋に一人になった菜々美。最初は部屋に入るだけで爆発しそうになったが、今はもう慣れて、緊張こそするが爆発する気配は無い。
でも緊張するから瞑想をしていた菜々美。するとここねがトレイに紅茶を乗せて戻ってきた。
「お待たせ」
テーブルの上を片付け、お菓子と紅茶を並べる。
家庭科室と変わらない和やかな時間、紅茶を一口飲んだ菜々美。香りが広がり、疲れた身体を癒してくれる。
「美味しい……」
「えへへ」
リラックスしたからか、少し眠くなってきた。いくらリラックスしたからといって、人の家で自分だけ寝るのはどうかと、襲いかかる睡魔に抵抗する。
「どうしたの?」
「ごめんなさい……眠くなってきて……」
「疲れてるんだねえ、眠っても大丈夫だよ?」
「でも……私だけ……なん……て……」
しかし抵抗虚しく、菜々美の意識は徐々に沈んでいく。完全に机に伏してしまった菜々美を見てここねは笑顔になる。ちなみに、菜々美以外がその笑顔を見れば背筋が凍るであろう。
「おやすみ、菜々美ちゃん」




