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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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秋の勉強会にて 若菜と紗里

 ある日のこと、紗里(さり)は スマホを眺めながらだらしない顔をしていた。顔面の、主に頬の筋肉が弛緩していた。


(若菜(わかな)との写真……、これ程までに嬉しいとは思いもしなかったわ。いいわね、常に若菜といるのは。写真の中の私に場所を変わってほしいわ)


 今日もいつも通り、若菜に勉強を教える日だ。大学受験まで一ヶ月を切っているのだ。合格ラインは余裕で超えているが、特待生を取るためにはあと少し足りない。それでも、このままのペースで頑張れば十分に取れるレベルまで上がる。


(そして、写真で物足りなくなった頃には、若菜が家に来てくれる。なんて最高な生活……!)


 昼を過ぎた頃に、若菜は家に到着する。昼食を一緒に食べられないのが残念だが、会えるだけで嬉しい。


 嬉しくなった紗里は、とりあえず冷蔵庫から生クリームを取り出し、それをボウルに入れ、更に砂糖を加えて泡立て器で混ぜ始める。ものの数十秒で完成したホイップクリームを一口舐め、その甘さに満足すると食パンを三枚取り出した。その食パンの耳を手刀で切り取り、真っ白になった食パン自体も半分に手刀で切る。


 あまり腕に負担がかからない手刀は、洗い物を極力減らしたい時に便利だ。といっても、あまり負担がかからないだけで使いすぎると腕に良くないため、基本的には包丁を使っている。


 そして実家から送られてきたシャインマスカットを洗って、水気を切ってホイップクリームを乗せたパンに挟んでいく。最後にできたフルーツサンドをラップで包んで冷蔵庫に入れて終わりだ。


(若菜の足音……⁉ 駄目よ、インターホンを鳴らされるまで待たないと。もしこれが付き合っていたのならすぐに出迎えに行けるはずなのに……!)


 とりあえず、インターホンが鳴るまでその場で正座待機。その前に紗里のスマホに若菜からメッセージが届いた。『着いたよ』と一言だけ。その後すぐにインターホンが鳴る。


 先に連絡がきたこともあり、少しタイミングを遅らせる必要は無くなった。すぐさまオートロックを解除し、若菜を招き入れるのだった。

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