ゲーム部にて 13
「ねえ! これって反撃できるの?」
巨人から逃げながら、千秋は千春に疑問をぶつける。
その間も巨人の拳は地面を叩き続ける。
「実はまだ戦闘は始まってないんだなあ!」
「はあ⁉」
「当たれば戦闘開始、今は戦闘にならないように逃げてる最中!」
「ガッツリ攻撃されているわよ⁉」
「そういう仕様」
「えぇ……」
「でもまあ、そろそろ逃げるばかりじゃあダメだよな」
「やるの?」
「もち」
そう言うや否や、千春は高速ターンで巨人に突っ込む。そして巨人に触れた瞬間――風が吹いた。
なんかそれっぽい音楽が流れ、千春と千秋の視界にディスプレイが現れた。
各ステータスの確認と、どう動くかを決められるようだ。
「……ゲームの世界に入っているのに、ここは一昔前なのね」
「おおっと、すずらんの悪口はそこまでだ」
まさかゲームの世界に入っているのに、ターン制バトルをするとは思わなかった。
相手はシンプルに『巨人』とだけ、それ以外の情報は無い。
とりあえず千秋は『攻撃』を選んでみる。
「私もとりあえず攻撃といこうじゃあないか」
どうやら千春も攻撃するらしい。
二人の行動が決まったことで戦闘が始まる。
まずは千秋の攻撃からだ――すると衝撃音と共に巨人が仰け反った。
『チアキの攻撃 巨人に八十二のダメージ』
「えっ、攻撃したの?」
これから殴りに行こうと思っていたのだが、既にチアキが攻撃したことになっていた。
「こうするんだよ!」
驚いた千秋に、千春がお手本を見せる。千春が巨人に近づいて平手打ち――衝撃音と共に巨人が仰け反った。
『チハルの攻撃 巨人に六十のダメージ』
「えぇ……」
「大切なのはタイミング!」
もう少しなんとかならなかったのかと、すずらんに文句を言いたくなる千秋である。
そうこうしていると、今度は相手の攻撃で、巨人が腕を振り上げて、二人に向かって腕を振り下ろした。
動きが遅く、余裕で避けられる――本来なら。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉」
「はっはっは、理不尽だろ?」
避けたはず、というか実際当たらなかった。なのに千春と千秋は吹き飛んでいた。
『巨人の攻撃 チアキは四十ダメージ、チハルは三十三ダメージ受けた』
そんな文字が現れた。見た目は派手だったが、ダメージ自体はそこまで。
「逆に明らか当たっているのにミスで当たらなかったりするぜ」
「そこら辺の調整頑張りなさいよ!」




