ゲーム部にて 9
「……聞いていた話と違うわね」
ゲームの世界へやってきた千秋は、とりあえず千春をぶん投げてから聞いていた話との差異に眉根を寄せていた。
『チアキ 職業:武闘家・レベル:四十三 体力:百四十五 魔力量:六十 魔力:十五 攻撃力:百七十 防御力:百五 素早さ:百五十八 千春への文句の数:三十一』
千秋のステータスはレベルが高い。そしてなぜか、涼香、涼音、千春の三人もレベルが高くなっていた。
「努力も無しにそのレベル、邪道ね」
「先輩がそれを言いますか?」
「あなた達、まだ城にいるはずじゃないの? それとも、滅ぼしたの?」
涼香達がいたのは、暗い空、瓦礫の山、そんな景色が見える場所。
「魔王の城を沈めたところよ」
「…………早すぎない?」
「おいおいおい……私達を舐めてもらっちゃあ困るな」
体力が半分に減った千春が不敵に笑う。
なにをすれば、この数分の間で終盤まで進めることができるのだろうか。千秋はそれが気になったが、別に知らなくても良いことだしツッコまないことにした。
そして千秋がなにも聞かなければ説明しなくてもいい。なんとなくこの場に似合わないほのぼのとした空気が漂う。
「魔王を倒しても、すずらんは見つからないのよね」
「どこにいるんですかね」
「高野すずらんならトイレで会ったわよ」
「「えぇ……」」
「まあ、トイレもあるしな」
「待ちなさい、ゲームの世界に取り込まれたと言っていたではないの」
「そんなこと言ってたの?」
千秋がすずらんから聞いた話と少し違う。ゲーム世界に取り込まれたとは言っていなかった。
「でも別にいいわ。ちーちゃん見つけたし」
ただ、千秋にとってはどうでもいいことだった。
「さっさと見つけましょ」
さっさと戻りたい千秋がすずらんを探し始めるのだった。




