ゲーム部にて 8
白い球体の機械が開き、中から出てきたのは一人の生徒。
黒髪のどこにでもいそうな生徒だが、その所作はどこか荒々しい。元々荒いというか、わざと荒々しくしているような雰囲気が漂う。
高野すずらんは機械から出ると、一目散にトイレを目指す。
部室を出て、廊下に出て、猛ダッシュ。
「ったく、さっさと進めろよアイツらマジで……!」
イライラを隠そうとせず、逆に発散しながらトイレに駆け込む。
「高野すずらん、ちょっといい?」
用を足して、トイレから出たすずらんに声をかけた生徒がいた。
「西崎?」
「ちーちゃん見なかった? 探してるの」
千春を見つけるため、片っ端から声をかけている千秋だ。
「いる。さっさと連れてけ」
そう言って、部室に戻る。なにも言わなくとも、千秋とついてきてくれる。
そしてまた白い球体の機械の前に戻ってくる。
「あなた……、凄い物作ったわね」
「ゲーム作りが趣味だからな。ほら、さっさと入れ」
「なんでよ? 普通にちーちゃんを起こしてくれればいいのよ」
一応、千秋にはなにをしているのかを説明している。それでも、千秋にとってはどうでもいいらしく、さっさと千春を出せと言ってくる。
「いやいや、あたしの依頼こなしてからだろ。でもまあ、最終下校時刻になったら今日は終わりなんだけどな。今日は終わりっつっても、ダラダラダラダラしてるし、逆にアンタがケツ蹴り飛ばしてくれねえと明日も明後日もここに来る羽目になるぞ」
「はあ? なにやってんのよちーちゃん……!」
呆れながら、渋々機械の中に入る千秋。すずらんが千春達と同じ場所からスタートできるように設定を弄ってくれたため、ゲーム世界で探す手間は省ける。
「んじゃ、精々頑張れ」
そうして、すずらんも機械の中に入るのだった。
再びゲーム世界に入ったすずらんは地面に埋まりながら、涼香、涼音、千春の様子を見る。
ここに千秋が合流する。そうすれば進むのも早くなるだろう。そう思った――。
「はあ⁉ めちゃくちゃ進んでるじゃねえか!」




