ゲーム部にて 3
景色が変わり、三人が立っている場所は長閑な農村だった。
風が草の香りを運び、なんかよく分からないけどそれっぽい鳥が鳴いている。
気温は暑くもなく寒くもない適温。誰に聞いても平和だと答えるような光景だった。
「最初の村にしては長閑すぎるんじゃあないか?」
「静かすぎるわね」
木で作られた家屋があり、人が生活していることも感じられる。それでも静かすぎるこの農村。
「それでも、涼音は可愛いわ」
「とりあえず、服装は普通で安心しました」
「涼音ちゃんがあの服装していたら、ちょっと私達が生きにくくなるね」
「それでも涼音は可愛いわ」
三人の服装は、農村に合っている布の服。亜麻色の服とズボンのセットだ。そして一応サンダルも履かせてくれている。
持ち物は特に無く、なにをどうすればいいのか分からない。
涼香、涼音、千春の三人が、とりあえずどうしようかと相談を始めた時――。
『時は二千XX年――地球の科学文明は一周まわって原始の時代から再スタートしていた。デジタルよりアナログである。トマトよりミニトマト。お好み焼きよりたこ焼き――』
「………………なんですか、これ」
全員の視界の下の、邪魔人らない場所に現れた文字を見て涼音が言った。
「触れないわね」
「なるほど。ゲームの世界だから、物語が進むのか」
「「つまり?」」
「ゲームの説明パートってこと」
「「なるほど……?」」
『ソフトコンタクトレンズよりハードコンタクトレンズ。レギュラーよりハイオク――』
「まだやってますよ」
「長いわね」
「長いとグダるんだよな」
『お好み焼きよりたこ焼き。麦茶より烏龍茶――』
「あっ、お好み焼き二回言った」
「私は麦茶派よ」
「いいや、玉露だね」
グダってきたのだから三人はダラダラ説明が終わるまで待つ。早く進めてほしい。
そしてようやく説明が終わり(お好み焼きは三回出てきた)これから物語が始まる。
『――魔王を倒す旅が始まる』
とりあえずそういうことらしい。大体は最初の村から、仲間を集まるため城へ向かうというのが多いだろうか? ただ、一人プレイならまだしも、今は三人いる。千春の説明を受け、別に城へ向かわなくてもよくないか、といった雰囲気が漂う。
「でも、一応あたしの職業王子ですし……」
「でもその王子って惑星の王子よ? 一国の王子ではないわ」
「先輩がまともなこと言ってる……⁉」
「ていうか、涼香がラスボスじゃね? 職業災厄だし」
「世界はあげるけど涼音はあげないわ‼」
「ゲーム破錠しますよ」
「もう破綻してるんだよなあ……」
ゲームとしての出来はもうどうでもいい。とりあえずの目的は、ゲーム部のすずらんを助け出すことだ。
「とりあえず動こうではないの」
「そうですね」
「まあ、とりあえずこの村を散策するところからだな」
散策しながら、千春にゲームの進め方を説明してもらおう。そう決めて、三人の旅は始まるのだった。




