家庭科室にて 番外編 2
「ちーちゃん見なかった?」
放課後のこと、甘い空気の残滓が残る家庭科室にひょっこり顔を出した千秋。
「みっ、みみみみみみみ見て無いわよっ」
声を上ずらせながら、火照った顔を手でパタパタ扇いでいる菜々美が答える。
「涼香ちゃん達も今日は来てないよ?」
そんな菜々美の隣で温かいお茶をちみちみ飲んでいたここねが答える。
「なんでいつもいつもあの二人を巻き込んでいるのよ!」
千秋は、今日千春としていた約束を思いだして憤る。
「連絡はつかないの?」
「つかないのよ。一緒に帰ろうって言ってたのに! まあ確かに、何時に帰るとは言ってないけれど!」
一応、約束した時にちょっと用事があるから遅くなると言っていたが、姿を消されるとは思わない。正確には、思ってはいたが、千春はちゃんと連絡してくれると信じていた。もう、信じるのをやめた方が良いかもしれない。
「位置情報を把握できる物とか無いかしら? 気配が無くなるとどうしようもないのよ」
「うーん、でも気配が無いってことは、この世界にはいないんじゃないのかな?」
「今日異界は出ていないわよ? 図書室にも来ていなかったし、地下校舎にもいないわ」
「菜々美ちゃん、どこに行ってそうか分かる?」
「涼香と涼音ちゃんは巻き込まれているの確定なのね……?」
「この時間で帰るってことはまず無いもん」
「確かにここねの言う通りね。でもごめんなさい、分からないわ」
涼香と涼音はすぐには学校から出ずに、しばらく時間を潰してから下校する。だいたい教室でいるか、家庭科室に来ているか。あとは他の部活動にお邪魔している。今回の場合は他の部活動にお邪魔しているのだろう。
そして涼音がいるから地下校舎という線は薄く、地上階にある部活動へお邪魔している。
「こうなったら片っ端から探してみるわ」
ある程度絞れているのなら、もう片っ端から探した方が速い。というかグループメッセージで聞けばすぐだ。でも、グループで聞くのは恥ずかしい。
「邪魔したわね、二人共」
自分の足で探しに行くことにした千秋であった。




