学校にて 11
「私がこのペットボトルを投げてゴミ箱に入れてあげようではないの」
ある日のこと、空になったペットボトルを持った涼香が言った。
「捨てに行きますよ?」
三年生の教室へやって来ていた涼音が言う。
「大丈夫よ、決めるから」
「らしいでーす」
すると、一気に教室内の空気は張り詰めたものになる。ただ一人、これまたこのクラスへやって来ていた菜々美だけが感情の抜けた顔をしていた。
涼香の席は、教室前方ドア付近にあるゴミ箱の対角。その席の隣はここねで、菜々美はそこにいる。よっぽどのドジっ子ではない限り、隣の菜々美に当たることなど無いが、涼香はその、よっぽどのドジっ子なのだ。
まあ、窓ガラスか蛍光灯にぶつけて割るという可能性もある。
「先輩が投げまーす」
涼音の声と共に、涼香がペットボトルを振りかぶる。そして――。
「あら?」
涼香がペットボトルを放とうと、腕を振り下ろそうとした時、案の定手からペットボトルが滑る。
真上に飛び、くるくると回るペットボトル。徐々に横へズレ――菜々美に当たる。
「ごめんなさい、菜々美」
「……だと思った」
その落ちたペットボトルを拾った菜々美は、ゴミ箱へ向かって投げる。ノールックで、クールに投げる。
綺麗な放物線を描いたペットボトルは、ゴミ箱に吸い込まれ――ること無く、天井に当たり戻ってくるのだった。菜々美の頭に。
「……なんで?」




