水原家にて 5
「涼香、明日は私と変わりなさい」
「つまりそれは、私から涼音を引き離そうということね?」
その日の夜、涼香の母の言葉に、涼香が目を細める。
「違うわよ。私の体で怪我してほしくないの」
「なるほど……。つまり、涼音から引き離そうということね」
「話聞きなさい」
同じことを繰り返す涼香に、母は重たい息を吐く。自分の体で涼香発言をされる身にもなってほしい。
涼香の母が、どこからともなく大量の写真を机に置く。量が多すぎて、テーブルを挟んで向かい合って座る互いの顔が見えなくなる。
「涼音の写真ではないの⁉」
「留守番している間、この涼音ちゃんの写真を整理してほしいのよ」
「一生やっていられるわ」
「私はしばらく仕事を休むつもりだから、あなたはたまには休みなさい。というか休んで」
大量の涼音の写真の整理を任せられ、断らない手は無い。
「決まりね。なら、明日に備えてなさい」
「寝る暇なんて無いわよ! 可愛い……可愛すぎるわ……!」
「涼音ちゃん。言ってやって」
寝る様子を見せない涼香に、母は今まで沈黙を貫いていた涼音をぶつける。
感情の抜けた顔をした涼音は、平坦な声で言う。
「せんぱい、はやくねましょう」
「可愛いわよ!」
「えぇ……」




