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学校にて 2
「涼音が可愛すぎる……会いたいわ……」
いつものこと。頬杖をついた涼香が、窓の外を眺めながら言う。いつも通りなため、誰も相手しない。というかむしろ、涼香から距離を取っている。
「ここね、来たわよ」
そしてそんな涼香のクラスに、いつも通りここねに会いに来た菜々美。
菜々美は教室に入ってきた瞬間気づいたが、もう遅かった。
菜々美が入ってきたと同時に涼香が立ち上がる。
ここねの席は涼香の席の隣。ここねへの距離は涼香の方が近い。
涼香が立ち上がった瞬間顔面から表情が消えた菜々美の体は、それでもここねの下へ辿り着こうと勝手に動く。しかし、ここねの下へ辿り着くことはできなかった。
ここねに辿り着く前に、涼香に連れ去られたのだ。
「菜々美聞きなさい。私は涼音が森羅万象において一番可愛いと思うのよ――」
「ここねぇ……」
喋り続ける涼香の声に消されることなく、ハッキリと、でも消え入りそうな菜々美の声が虚しく漂うのだった。




