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放課後にて 26
「もう今年も短いわね」
ある日の放課後にて、頬杖をついてそれっぽく言う涼香。
「…………」
そんな涼香を無視して、涼音は一人スマホと睨めっこしていた。
「そのうち冬がくるわね」
「そですねー」
今度は目線を涼音に向けて言う。すると反応を返してくれた。
「ぬくぬくの季節よ」
「なんですかぬくぬくって」
「あら、言わせるの? 恥ずかしいではないの」
「えぇ……」
スマホを置いて、涼音は涼香を真正面から見る。目が合うと涼香は微笑み、綺麗なウインクをする。
それでも涼音が黙って見つめていると、やがて照れたように涼香が顔を逸らす。
「なんなんですか……」
「ふふっ、涼音が可愛いのがいけないのよ」
さっきまで照れた様子は演技だったのか、すぐさま顔を涼音にロックオンした涼香が言う。
「食べちゃいたいぐらい可愛いのよ」
「なんなんですか」
食べちゃいたいぐらい可愛い涼音が口を尖らせるのだった。




