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休日にて 5
「先輩、なに見てるんですか?」
ある日の休日、家の前の道路の端でしゃがみこんでいた涼香に涼音が問いかける。
涼しくなったからこそできる、家の前でのしゃがみこみ。夏ならば絶対にできないししたくない。
「見なさい、コンクリートの割れ目から植物が生えているわ」
涼香の目線の先には、言う通り細く小さい植物が生えていた。
種類も分からないし、いつもなら雑草と歯牙にもかけない物。でも、こうして見ると、可愛く見える。
「まあいいや、入りますよ」
可愛く見えるが、ずっと見ていたい程ではない。早く家に入ろうと、涼音は涼香を促す。
「そうね、家で可愛い涼音をずっと観察するわ」
そう言って立ち上がろうとする涼香だったが、バランスを崩して、どてーん、と後ろに倒れるのだった。
「えぇ……」




