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通学中にて 2
ある日のこと。
「涼音、涼しいって良いわよね?」
家を出て、駅までの道を歩きながら涼香が言う。
「秋は短くなった気がしますけどね」
「寒くなればそれで良いではないの。暑いより」
「確かに」
「寒くなれば、お姉ちゃんが温めてあげるわね」
「いらないです」
「意地悪ね」
十月は、よっぽどのことをしない限り汗はかかない。通学や散歩、緩い活動にぴったりといえる季節。
「心地良いわね、この涼しさ。秋よ」
「そですね、涼しいのは好きですよ」
「私のことも?」
「そういえば先輩――」
「私は涼音が好きよ!」
「うるさいですね」
「涼音は私のことも?」
「言わせなくてもよくないですか?」
「目に入れても痛くないのね」
「はあ?」
涼しさのおかげか会話も捗るのだった。




