文化祭にて 86
「それぐらい別にいいけど」
「え⁉ いいの?」
「いやっ、紗里ちゃんが言ったんじゃ……?」
「そっ……えっ……、本当にいいの……? えと、写真よ?」
いきなり写真を撮ってくれないかと、そう言われたが拒む理由は無い。というか、なぜお願いした側の紗里が驚いているのだろうか。
(紗里ちゃんってなんか急によく分からないことするよね……? 涼香もそうだけど、美人ってそういうもん? …………、そういうもんだ。菜々美もそうだし、神鳴もそうだもん)
身の回りの美人のせいで、美人への認識が変わっている若菜である。
でもとりあえず、写真なんていくらでもどうぞだ。
(え、え、え、え、え、え、え、え、え、え、え、え、え、え、え、え、え、え、え、え、え――えっ‼ いいの? 写真撮ってくれるの? いきなりなに言ってるんだと思われている思ったわ! 本当に……撮れるのね……! 若菜とのツーショットを、バックアップはいくつ用意しようかしら、複製と厳重なメモリを――あああああああああああ! まっ、まままままままっ、待ち受けにっ……‼ ああ駄目よ! それは流石に駄目よ!)
「紗里ちゃん……? 本当に大丈夫?」
「大丈夫よ! 撮りましょう!」
とてつもなく震える手で、スマホを持ち上げる紗里であった。




