文化祭にて 83
若菜と共に、絵画部へと向かっていた紗里はふと目に入った教室を見て足を止めた。
「どうしたの?」
急に止まった紗里を言葉通りの目で見る。
「若菜、写真館があるわね」
「え? うん」
「どういったもの? ただ写真を撮るだけ?」
この学校の写真館なのだ。ただ写真を撮って終わりとは考えられない。
「ふっふっふっ……さすが紗里ちゃん」
若菜の反応から察するに、ただ撮って終わりではないのだろう。
「よく気づいたね! 実は、モデルみたいに本格的な撮影ができるんだ」
「ああ、本格的な方向に予想外なのね」
平和的な予想外で安心した。それならば寄るのもいいかもしれない。
若菜とのツーショット。考えただけで頭が沸騰しそうだ。
「紗里ちゃん大丈夫⁉」
というか沸騰していた。
似顔絵も欲しいが写真も欲しい。でも誘う勇気が無い。
「紗里ちゃーん」
「っは‼ そうね、行きましょうか」
(本当に行ってもいいの? ここは若菜を誘うべきではないかしら。普段のスマホのカメラとは違って本格的な撮影なのよ? こんな機会を逃して……いえ、そもそも先にスマホで写真を撮ってからにするべき? どうすればいいの? 誘う? でもスマホで撮りたい。だって二人だけの秘密感があるじゃないの。他にも――)
紗里の葛藤が長く続き、気がついたころには絵画部へとやって来てしまったのだった。




