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文化祭にて 80
若菜と紗里が去ってしばらく。
「起きたのね」
涼香の肩に頭を乗せたまま目を開いた涼音。
「帰りたい……」
「残念ながらまだまだ文化祭は終わらないわよ」
「やだなぁ」
頭を上げ「ん〜」と唸りながら、再び涼香の肩に頭を乗せる。
「可愛い……‼」
普段でもなかなかお目にかかれない涼音だった。
「これが文化祭テンション……凄いわ……!」
この涼音の可愛さを独り占めしたい涼香は、なんやかんやで人の多い外ではなく、誰もいない静かな場所へ行きたいと考える。
「涼音、お姉ちゃんと――」
「よし、行きましょう」
場所を変えようと提案しようとした涼香の言葉を遮って、涼音が急に立ち上がった。
「なにしてるんですか? 早く、休憩終わりましたよ」
さっきまでの可愛い涼音はどこへいったのか(それでも涼音は可愛い、どんな涼音も等しく可愛いのだ)
そんな急な変化に、恐ろしいものを見たような表情を浮かべる涼香であった。




