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文化祭にて 75
「でっっっっきた‼」
時刻は十四時半を過ぎた頃、ようやく完成した似顔絵を善実から受け取った涼香と涼音。
「あらあら、良い涼音具合ではないの」
「なんですかあたし具合って。わっ、先輩すっごく先輩っぽいですよ」
「こっちからすれば二人共なに言ってるか分からないんだよなぁ」
描いて貰った似顔絵は、ただの似顔絵だ。別に特徴を誇張したようなものや、可愛くデフォルメされたものでもない。写真のように精巧な綺麗な絵だ。素材が素材のため、なにかの賞を取れるのではないのかと考えてしまう程。
「そう? でもまあいいわ。ありがとう、宝物がまた一つ増えたわ」
「そですね、なんというか……ありがとうございます」
なにはともあれ、二人が満足したのだからそれ以上も以下も無い。純粋な感謝の気持ちに、思わず涙が零れないように天井を見つめる善実であった。




