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文化祭にて 72
そしてその頃の紗里は――。
「若菜が交代するまであと一分……」
若菜の交代時間を待っていた。
「先輩もうそろそろ向かった方がよくないっすか?」
共にいる翔がそう言うが、紗里は首を横に振る。
二人は若菜のクラスから結構離れている場所から見ている――というか観測の方が近い。
「交代時間直後に行くと、待っていたのが丸分かりじゃないの。それはちょっとどうかと思うの。あくまでも、偶々を装わないと」
「そんなこと言ってると、他の子に取られるっすよ」
「もう時間ね! 行くわ‼」
「うわぁ、もう見えない」
偶々を装わなければならないと言っていたくせに、時間になるや否や速攻で若菜の下へ向かった紗里である。




