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文化祭にて 71
一方その頃――。
涼香と涼音は、似顔絵を描いてもらうために黙って座っていた。
そんな二人を、絵画部の善実は真剣な表情で観察していた。持ったスケッチブックに鉛筆を走らせる。
「涼音、見なさい」
「見てますよ」
「あの鉛筆、そろそろ先っちょが折れるわよ」
「えっ――あっ、折れた」
「ふふっ、言った通りでしょう?」
涼香の言う通り、善実の持つ鉛筆の先端が折れてしまった。
「動くな」
「なるほど、涼音を固定しろということね」
「先輩が動きすぎなんですよ」
「そう、動きすぎ」
涼音を抱きしめて固定した涼香は頬を膨らませるのだった。




