文化祭にて 69
涼香と涼音が、絵画部で似顔絵を描いてもらっている頃――。
「地下校舎なんてあったんですね……」
「秘密だよ?」
菜々美とここねと共に地下校舎へやって来た天理が呟き、彩羽が頭を抱える。
「もうこの学校がよく分からない……」
「多分先生達も知らないと思います」
「えぇ……」
言葉を交わしながら、四人は怪しい薬品部の部屋までやって来た。
水筒を抱えたここねの代わりに、菜々美がドアを開ける。
中に入ると、げっそりと痩せこけた神鳴と目が合った。
「…………………………………………」
「持ってきたよ」
ここねが笑顔を浮かべながら水筒を掲げる。そしてそんなここねの頭を撫でる菜々美である。
「こんにちは」
「お邪魔します」
天理と彩羽も中に入りドアを閉める。
「大丈夫?」
「………………………………」
なにも反応を返さない神鳴に、心配した菜々美が問いかける。すると神鳴はへなへなとその場に崩れ落ちた。
「大丈夫⁉」
「どうしたんですか⁉」
ここねと菜々美が駆け寄り、その後すぐに天理と彩羽もやってくる。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 陽がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 眩しい‼ ああああああああああああああああああああ!」
「もしかして――」
なにかに気づいた菜々美が、三人に外に出るよう促す。
突如苦しみだした神鳴を放って出ていくなんてどうなのかとなったが、菜々美はそうしなければ神鳴は戻らないと言うと、ここねは納得して手伝ってくれた。
水筒を神鳴の傍らに置いて、四人はとりあえず外に出るのだった。




