文化祭にて 63
そして、それに追い打ちをかけるようなことが起こる。
涼香達の前に、天の川のように光が漂いだしたのだ。
キラキラ輝く光、なにかの演出かと、気づいた一同はそれぞれ目を合わせる。
「――なんすか? この光」
翔のその言葉に続いて、それぞれ口を開く。
「誰も知らないということは、そういうことね」
「どういうことですか……」
相変わらずの涼香と涼音に――。
「でも、綺麗ですね」
「天理さんの髪もこんな感じだよ」
「彩羽さんったら、嬉しいことを言ってくれますね」
どことなく甘い雰囲気を醸し出す年長者二名である。
「なんか見覚えある」
「さすが元生徒会長ね」
顎に指を当てる千春に、自分は分からないと、肩をすくめる千秋。その言葉を聞いた紗里が言う。
「発生源はあの植え込みみたい」
その言葉に一同は、紗里の指さす方を見る。
「――あっ、もしかして」
なにかに気づいたここねが、とてとてと、その植え込みに近づく。
「危ないわよ」
急いでその後を追う菜々美が、植え込み近くでしゃがみ込むここねの隣に立つ。
「菜々美ちゃん、多分これだよ」
ガサゴソ植え込みから取り出したのは、持ち手がついた二リットルサイズの黒い水筒だ。その口の部分、蓋は閉じてあるが、隙間からキラキラと光が出てきている。
「水筒ね――あっ、なにか書いてあるわ」
重たいだろうからと、ここねから水筒を受け取った菜々美が声を上げる。
「怪しい薬品の材料 触るな危険 センサー多数――って危ないわね⁉」
慌ててその場に水筒を置いて、ここねの手を引いて離れる菜々美である。
そうして戻ってきた二人に千春が早速問いかける。
「なんだった?」
「怪しい薬品の材料よ。私達はそれを探していたの」
「随分と物騒な物を探していたんですね」
「うん、頼まれたんだぁ」
「そんな物騒な物を頼む人がいるんだ……」
天理と彩羽を交えた五人の会話の横では、見に行こうとする涼香を涼音が止めていた。それでも止まりそうになかったため、紗里が置いてきた水筒を回収しに行く。
「先輩危ないっすよ」
「大丈夫だと思うわ」
持って帰った水筒を涼香に見せる紗里。
「これが件の怪しい薬品よ材料よ、涼香ちゃん」
「怪しい薬品部の物ね、神鳴の物よ」
「やっぱり知ってたの」
「当然ではないの」
そう言って、水筒に涼香の指が触れた瞬間――。
「痛いわっ⁉」
バチッと電気が発生した。
慌てて手を引っこめた涙目の涼香である。
「やっぱり、触るな危険の対象は涼香ちゃんみたい」
電気が発生する瞬間だけ、水筒から手を離して無事だった紗里が分析する。
「この多数のセンサーも、涼香ちゃんが触れないかどうかを確かめるためね」
「そんなピンポイントで先輩だけ……」
「そうしたい気持ち分かるなあ」
呆れる涼音に、しみじみと頷く翔である。




