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文化祭にて 60
「まさか涼音、知らないの? 怪しい薬品部のことを」
「なんですかそのよく分からない部活の中でも更によく分からない部活は」
目を丸くする涼香に、冷静にかつ早口で返す涼音。
涼音が知らなくても仕方の無いことだ。なぜなら、涼香は今までそんなこと涼音に言ったことが無かったからだ。仮に言っていたとしても、涼音は聞き流している。
「涼音ちゃん地下校舎に行きたがらないもんね」
そう言ったここねが、えへへと笑うと、涼音の顔から血の気が引く。
「……怖い」
「涼音は私が守るわ‼」
「ちょっと⁉ 人前で抱きつかないでよ!」
「菜々美ちゃん大好き‼」
「ああああぁああああああああああああああぁぁぁ!」
ごちゃつき出した渡り廊下、いつも通り菜々美が爆発してこの場が収まるのかというところで――。
「まあ、ここにいたんですね」
天から女神の声が聞こえたのか、そう錯覚してしまう声が響いた。




