文化祭にて 59
人が少ないといっても、やはり涼香の周りに人は集まってくるものである。それでも、動きやすい分まだマシだ。
「さて、絵画部へ行こうではないの」
「はーい」
そうして、絵画部へ向かう途中――。
「あら、菜々美とここねではないの」
なにかを探している様子の菜々美とここねがいた。
「あっ、涼香ちゃんと涼音ちゃん」
探すのを中断した二人の下へ涼香と涼音が向かう。
四人がいるのは外と校舎内を結ぶ渡り廊下だ。
「どうもです」
「二人でなにをしているのよ?」
近づいてくる二人を見て、少し意外そうな顔をした菜々美とここねだったが、特に何も言わずに質問に答えた。
「探し物よ」
「なにか落としたんですか?」
「ううん、怪しい薬品の材料を取るための仕掛けを探しているんだぁ」
「見れば分かるらしいんだけどね」
二人の口から出てきた言葉が、涼音には聞き慣れない言葉だったため、聞き間違いではなかったのか、涼香の顔を見る涼音である。
「どうしたのよ? 可愛い顔を向けて」
「いや、怪しい薬品って聞こえたんですけど?」
「怪しい薬品って言ったから、涼音ちゃんの聞き間違えじゃないよ?」
「えぇ……」
聞き間違えではなかったらしい。困惑を隠せない涼音である。




