文化祭にて 57
へなへなと崩れ落ちた神鳴に、何事かと菜々美とここねは遠くから見る。
怪しい薬品が無くなったと言っていたが。
「どうしたの?」
とりあえずどうしたのか聞いてみるここねである。
「怪しい薬品の……在庫が無くなった……」
「あー……、だからかあ」
「結構高いの?」
「ううん、自作」
「じゃあ作れ――」
「材料がっ!」
菜々美の言葉を遮るように、突如叫び出す神鳴。突如叫びすぎて、最早デフォルトが叫んでいる状態なのではないかと錯覚する程。
「急に叫ばないでよ」
「材料がどうしたの?」
手に入りにくい材料なのだろうかと、そういう意味も含めてここねが問いかける。
「………………」
神鳴はたっぷり沈黙して、やがて口を開いた。
「材料は……簡単。でも、あああああうああああああうあうあうあう……嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
とりあえず耳を塞ぐ菜々美とここねである。
「材料を採取するための仕掛けを設置してるんだけど、文化祭中だから行けないのぉ……!」
「「なんて?」」
「あああああああああもぉぉぉぉぉぉ! 一回で聞いてよぉぉぉぉぉぉぉ!」
殺虫剤をかけられた虫みたいにもぎゃもぎゃしている神鳴を、不思議な顔をして眺める二人であった。




