文化祭にて 56
「……本当になんの用?」
「んー、なんとなくかな」
そんなここねの言葉に、恐ろしいものを見たような表情を浮かべる菜々美と神鳴である。
怪しい薬品部の部室として使っているこの教室は、一般的な理科室と変わらない。強いていえば窓があるかないかの違いだ。
そんな理科室のテーブルの上に、中身を飲み干した小瓶を置いた神鳴はその場で頭を抱える。
「嫌だ嫌だぁぁぁぁ! 用も無しにこんな所に来るなんて陽の者すぎるよぉぉぉぉぉぉぉ! 血筋的に陽の光に弱いのにぃぃぃぃぃぃぃ!」
「えへへ、慣れれば大丈夫だよ」
「そんな無責任なぁ‼」
「えっと、ここね? やっぱり出ましょ? 神鳴の身体が大変なことになるわよ」
「でも、待ったをかけたのは神鳴ちゃんだよ?」
「…………それもそうね」
確かに、思い出せば出て行こうとした二人を引き止めたのは他でもない、神鳴自身なのだ。
ああだこうだ言っているが、いてほしいのだろうか。
「用があると思ったから引き止めだけだよぅ……」
力無く答える神鳴に、菜々美は申し訳ない気持ちになる。
再びげっそりとしてきた神鳴は、再び白衣のポケットから小瓶を取り出して中身を飲み干す。
「これが無いとやってらんない……!」
何本も飲んでも大丈夫な物なのか、疑問に思ったが聞かないことにする。
ここねは菜々美と顔を見合わし、外に出ようか? と目で会話していると、今日何度目か、神鳴の絶叫が響いた。
「ああああああああああああああああっ⁉ 怪しい薬品が無くなったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」




