表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

817/929

文化祭にて 55

 怪しい薬品部とは、文字通り怪しい薬品を取り扱う部活である。


「嫌だ嫌だ……! なんで煌びやかな学校生活を送っている柏木(かしわぎ)さんと芹澤(せりざわ)さんがこんな辺鄙な怪しい部活にぃぃぃ……!」


 そんな怪しい部活動に部員が何人も所属しているはずもなく、所属しているのは平伏している白衣を着た生徒一名である。


「だって文化祭だし……」

「とりあえず顔を上げましょう?」

「自分に触らないでください! 綺麗な手が汚れちゃう!」

「でもずっと下向いたままじゃ――」

「せめて半径教室の端まで行って貰えると……!」

「えぇ……」


 そう困惑はしつつも、菜々美(ななみ)はここねと教室の端――とりあえず対角線上の入口まで動いた。


 そこでようやく、その生徒は顔を上げる。


 分厚い眼鏡をかけ、洗ってはいるが整えられていないボサボサの髪をした生徒の、げっそりとした顔が見える。


 天雷神鳴(てんらいかんな)――菜々美達と同じ三年生である。


「わっ、神鳴ちゃんすっごくげっそりしてるよ!」

「キラキラに照らされて……!」


 こんな地下に籠る生徒の前に、なんやかんやでかなりの美人の菜々美と、可愛いここねが現れたのだ。その強烈な輝きに、血筋的に日陰で生きたい神鳴が照らされればこうなる。


「私達どうすればいいの? とりあえず出る? 出たらいいの?」


 そうやって教室から出ようとするが、対角線上の教室の隅では、神鳴が手を突っ張っている。待て、ということだろう。


 神鳴は白衣のポケットから小瓶を取り出し、その中身を一気に飲み干した。


 するとたちまちげっそりした顔が膨らみ、驚かれない顔に戻る。


 それと同時に分厚い眼鏡が本領発揮し、瞳が見えなくなった。相変わらず髪の毛はボサボサのままだが。


「えぇ……」


 そのあまりの変わり様に菜々美は困惑の声を出す。


「なにを飲んだの……?」


 恐る恐るここねが神鳴に聞いてみる。


「怪しい薬品」

「えぇ……」


 今度はここねが困惑するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ