文化祭にて 50
「記憶なんてしょっちゅう消し飛んでるっすから!」
「ああそうなの……」
しょっちゅう消し飛んでいるのに、なぜこんなにも笑っていられるのか。慣れていいものではないような気がする。
「でも冗談っすよ。先輩の可愛いところ、わかなんに――というか、うちら先輩の気持ち知ってるやつら同士内で共有するだけっすから」
「信用できる……?」
「実績持ちっすから。うちら全員、結構独占欲あると思うんすよね、涼香への対応を見てもらったら分かるように」
そこは若菜に聞いたことがある。なぜみんなが涼香のフォローを全力でするのか。
「そうね、そういうことなら」
そういうことなら放っておいていいかと、納得を示した紗里が歩き出す。
「あっそうだ! うちが先輩とイチャイチャしてたらわかなん嫉妬しませんかね?」
咄嗟の思いつきを翔が言うと、紗里がつんのめる。
「なななななっなにを言っているの! 若菜が嫉妬? そんな事させる訳無いわ――」
「でもわかなん鈍感だから『お似合いだねー』って言いそう」
「私を傷つけて楽しい?」
そう言ってよろめく紗里を見て背筋がゾクゾクする翔である。
「本気で先輩を好きになりそうっす」
珍しく、恐ろしいものを見たような表情を浮かべる紗里である。




