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文化祭にて 45
「ほら涼音、あーん」
「いやいいです」
涼香が餅を持ち上げる前に止める。
不満気な目を向けてくる涼香だが、涼音は知らんぷりをする。
「素直じゃないわね」
「そんなあたしも可愛いですからね」
「よく分かっているではないの」
ズズっとぜんざいの汁を飲む――そしてむせる涼香である。
「なにやってるんですか……」
そう言った涼音もズズっと汁を飲む。
「あ〜……染みる〜」
無意識のうちに溜まっていた疲労がほぐされていくような感覚。涼音は空を仰ぎ見る。
「いー天気ですねー」
「そうね、涼しくて空が綺麗。まるで涼音のよう」
「ごめんなさいマジで意味分かんないです」
「涼音が可愛いのがいけないのよ」
「それ言えばなんでも解決すると思ってません?」
「思っているわ!」
「えぇ……」




